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趣味で鉄道好きな人はもちろん、就職・転職で鉄道業界に興味がある人もどうぞ! 現役鉄道マンが、鉄道の雑学や裏話を語ります。

リニア開通後は「貨物新幹線」を東海道に走らせてほしい

以前、リニアの消費電力に関する記事を2本投稿しました。

リニアはどれだけの電力を消費する? 原発再稼働は必須なのか?
リニアの運転本数は「1時間に8本」で足りるのか?

リニアが大量の電気を喰うことは間違いないでしょう。
ただ、だからといって、「リニアは悪だ! 不要だ!」などと即座に決めつけるのは、ちょっと待ちましょう。

リニアという路線の良し悪しは、リニア単独で判断するのではなく、他の交通機関も含めたトータルで考えるべきだと思います。
今回の記事では、そのあたりを説明します。

 

リニアの間接効果の例 国際線の充実


リニアが開通すれば、リニアを直接利用する人はもちろん恩恵を受けますが、それ以外にも間接的な効果が生まれるはずです。

一例として航空業界。
リニア開通後は、航空機が持っていたスピードというメリットは失われます。
航空会社が「リニアには勝てない」と判断して、首都圏~中京圏・近畿圏の路線を廃止する可能性は高いでしょう。

するとその分、空港の発着枠に空きができます。
その空きを活かして国際線を充実させ、インバウンド需要に応えるという戦略もあるはずです。
まあインバウンドうんぬんは、コロナ終息後にどうなるかわかりませんけど……。

リニア開通で余裕のできた東海道新幹線に「貨物新幹線」を


リニア開通の効果は、もしかすると物流にも及ぶかもしれません。
具体的には、東海道新幹線に「貨物新幹線」が走るのを期待したいです。

リニア開通後、のぞみは廃止されて、ひかり・こだまのみになると予想されています。
1時間にどれだけの本数を運転するかは不明ですが、多くてもひかり5本・こだま3本といった感じではないでしょうか。

2020年現在、東海道新幹線では、1時間に最大16本が発車していきます。
(のぞみ12・ひかり2・こだま2)
将来は列車本数が半分くらいになるでしょうから、線路に空きができた分、そこに貨物新幹線を走らせるという構想です。

東京~大阪間は物流の大動脈であり、ここに貨物新幹線を走らせるメリットは計り知れない。
人口減少やテレワークの普及もあり、「ヒトの移動」は将来的に需要が右肩下がりになるでしょうが、「モノの移動」はまだまだ衰えないはずです。

貨物新幹線は高速かつ定時性に優れた輸送手段!


貨物新幹線のセールスポイントは、なんといってもスピードでしょう。

2020年現在、東京~大阪を結ぶ最速の貨物列車は、佐川急便の荷物を運ぶスーパーレールカーゴ(列車番号50・51)です。
所要時間は約6時間。
その他の貨物列車だと、だいたい7時間前後といったところ。

この点、貨物新幹線ならば3時間もあれば走破できるはず。
所要時間が従来の半分程度になれば、まさに革命だと思います。

さらに、貨物新幹線は定時性にも優れた手段になるはずです。
在来線の貨物列車は、人身事故や動物との衝突、大雨などの自然災害に巻き込まれ、遅延するケースが少なくありません。
しかし新幹線は、この手のトラブルには強い(=運転見合わせになりにくい)です。

高速・定時性に優れた輸送手段として、強みをアピールできるのではないでしょうか。

貨物新幹線ができれば「働き方改革」の一助になるかも


仮に東京~大阪間に貨物新幹線が走れば、在来線の貨物列車は、本数を少し減らすことができるかもしれません。
貨物列車は重いので線路を痛めるのですが、運転本数が減れば、その分だけ線路へのダメージを減らせます。
維持・管理コストの削減につながるでしょう。

また、工事に従事する作業員の負担も減ることが期待でき、働き方改革にもつながるかもしれません。

2021年春から、JR東日本やJR西日本が「終電繰り上げ」を予定しているのは、みなさんご存じでしょう。
終電繰り上げの理由はいろいろありますが、その一つに「線路工事の時間を確保するため」があります。

工事に従事する作業員の負担が大きいことから、現在、工事を請け負う会社では人手の確保に苦労しています。
終電を繰り上げ、工事時間に余裕を持たせて労働環境改善 → 人手の確保につなげるのが狙いです。

ただし、東海道線のような夜中にも貨物列車が走っている路線だと、終電繰り上げ = 工事時間の拡充とはいかないケースがあります。
実際、JR東海は「貨物列車が走っているので、終電を繰り上げても効果は少ない」と社長がコメントしたようですし。

しかし、貨物新幹線によって在来線貨物が減れば、それだけ工事時間の確保に融通が利きやすくなります。
結果的には、作業員の労働環境改善に貢献できると思われます。

貨物新幹線は運送業界の諸問題を解決できる可能性も


貨物新幹線の効果は、まだあります。

現在、運送業界がトラック運転手の人手不足に悩まされているのは、みなさんご存じでしょう。
これに対応するため、トラックの自動運転などの実験が進められています。

しかし、貨物新幹線によってモーダルシフトが進めば、トラック運転手の人手不足を少しは緩和できるのではないでしょうか。
人手不足による“物流崩壊”を喰い止める切り札になる可能性があります。

環境面のメリットもありそうです。
トラック輸送が減れば、それだけ排出される二酸化炭素(Co2)も減ります。
トラック輸送よりも鉄道輸送のほうがエコですから、リニアが大量に電気を喰っても、トータルではエコになるという考え方もあります。

さらに、交通事故の減少も期待できます。
全日本トラック協会が発表している資料によると、事業用貨物自動車による事故データは、次のようになっています。
(2017年の数字)

・死亡事故 270件
・重傷事故 1,057件
・軽傷事故 12,889件


こんなに事故が起きているなんて、今まで知らなんだ……。
また別の資料によると、死亡事故件数の多い都道府県は、以下の通りです。

埼玉
大阪
愛知
東京
静岡


この都道府県、まさに東海道沿いではないでしょうか。

鉄道による貨物輸送は、トラック輸送よりも圧倒的に死傷事故が発生しにくい。
ですから、貨物新幹線でモーダルシフトが進めば、交通事故の悲劇を減らすことにもつながるはずです。

リニアという路線の良し悪しはトータルで考えるべき


長くなりましたが、話をまとめましょう。

リニアは確かに電気を喰いまくる。
そこだけ見れば、確かにリニアは悪。
しかし、リニア開通後、線路に余裕のできた東海道新幹線に「貨物新幹線」を走らせることができれば、トータルではいろいろなメリットが見込める。

冒頭の繰り返しになりますが、私が言いたいのは、

リニアの賛成・反対は、リニア単独で考えるのではなく、周辺も含めたトータルで考えるべき

ということです。

もちろん、「トータルで考えてもリニアはデメリット(環境破壊とか)の方が大きいと思う。やっぱり賛成できない」と考える人もいるでしょう。
それはそれでかまいません。
賛成・反対いずれの立場だとしても、“木を見て森を見ず”に陥らないことが大切だと思うのです。

何事にも良い点・悪い点がありますから、リニアにも悪い点があるのは当然です。
悪い点だけを抽出して突っつけば、いくらでもリニアを悪に仕立てることができます。

しかし、そういう狭い視点ではなく、「リニアを活用してトータルメリットを最大にする手段はないか?」と考えてみることも必要ではないでしょうか。


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