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鉄道業界を襲う運転士不足 「休みが少ない」で離職・転職する人が多い

以前なら考えられなかった事態が、2023~2024年には起こり始めるようになりました。運転士不足による減便です。相次ぐ退職や採用難により、運転士の必要数が確保できず、やむをえず減便に踏み切る鉄道会社が出てきました。

コロナ禍真っ只中のときに、「コロナ感染による運転士不足で減便」は起きていました。しかし、恒常的な人手不足による減便が生じているのが、ここ最近の状況です。

これは中小鉄道会社だけが直面している問題ではありません。大手でも、運転士の離職が相次いで現場が大変になっている会社があるようです。運転士が足りなければ、残った運転士を残業や休日出勤で駆り出して、なんとか回さざるをえない。しかし、それがまた労働環境の悪化 → 離職という、悪循環を招く……。

駆り出される運転士本人も大変ですが、現場管理者もプレッシャーが凄いと思います。人を手配できなければ、列車運行に穴が開いて事件ですから。

転職の動機は「休みが少ないから」が多い模様

私自身は転職経験がありませんが、他社の知り合いや、実際に転職した鉄道マンから聞いた話を総合すると、「運転士の転職事情」は、どうも以下のような感じです。

転職の動機としては、「休日が少ない」が最大です。

「給与が低くて」というケースもあるのでは? と思うでしょう。ニュースなんかだと、そちらの原因がフォーカスされている記事もあります。が、少なくとも私が見聞きした範囲では、給与うんぬんを最大の理由として転職した人は知らないです。

「休みが少なくてシンドイ。給与はいいから、とにかく休みが欲しい」。こういう人ばかりです。

20代のうちだと、「休みが少ない」は耐えられます。若さの勢いでなんとかなる。

ところが、30代になると体力が落ちてくるので、「休みが少ない」をシンドイと感じる人が増えてきます。さらに、結婚して家族ができると、家族と過ごせる時間が確保しにくい「休みが少ない」は、ますます敬遠されるようになってきます。

また、運転士は安全確保に気を遣う仕事です。集中力が求められますが、疲れていたりすると集中力って発揮できませんよね。休みが少なくて身体がシンドイと、じゅうぶんな集中力を以て仕事ができないので、安全運行にも支障が出てくる。「このままだと事故を起こすんじゃないか」と怖くなって辞めた、という例もあります。

こんな感じで、休みが多い会社を求めて転職と相成るわけです。あくまで私が知る範囲での話で、業界全体でそうとまでは断言できませんが、そこまでズレていない見方だと思います。

運転士の休みを増やす即効性のある施策はない

このあたりを踏まえて、鉄道会社側としては、どう人手不足の対応をしていくべきか? 「給与が低くて・休みも少ない」では救いがまったくありませんが、「給与は低いけど・休みは多い」という会社なら、ワンチャン人を集められるかもしれません。

ただ、実際には難しいでしょう。「休みを増やす」は、運転士の数が揃わないと実行できない施策です。運転士の数を確保できていないのに休日を増やしたら、列車の運行ができなくなってしまいますから。

会社として、物理的に──現実的かどうかは別にして──すぐに行えるのは「給与を上げる」の方です。となると、待遇改善案は「給与が高くて・休みは少ない」の方向にしか持っていけないわけです。

結局、運転士の休みを増やして離職を防ぐ、即効性のある手段は存在しないのですね。

効果が出るまで数年かかりますが、新卒採用で数を確保をするしかないでしょう。昨今の就職戦線事情を考えると、それも大変なんですが……。

以前はそれなりの高さのハードルを設けて選考し、ある程度数を絞って採用していた大手会社でも、最近はかなり内定が出やすくなっているようです。見境なく内定をバラ撒いている……とまでは言いませんが、なりふりかまわず採りにいく姿勢が強まっているのは間違いありません。それだけ、人手不足が大きな問題になっているのです。

休みを確保できるよう会社側が継続的に努力していたか?

ただし、今になって慌てているようでは遅いというのが私の意見です。後知恵バイアスかもしれませんが。

休みが少ない、言い換えれば長時間労働は、ここ1~2年ではなく、ずっと前から社会問題化していました。法律や国の政策も、長時間労働を抑制する方向となり、「長時間労働はアカン」という認識が社会に浸透していきました。

さらに、インターネットやSNSの発達によって、ブラック企業と烙印を押されてしまうと、そのイメージがなかなか払拭できず、求職者からは避けられる時代になりました。

こうした時代背景を考えると、運転士の休みをしっかり確保できるよう会社側が努力しなければいけないのは、必然だったわけです。

昔は(ひょっとして今も?)年間休日が100日ないとか、年次有給休暇は冠婚葬祭のときしか取得させてもらえないとか、そんな鉄道会社もありましたが、それがいつまでも通じるはずはなかった。そのあたりを認識し、少しずつでも変革できていたかどうかが、現在の状況に反映されているのかもしれません。

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