『運転士になるまでシリーズ』の続きです。
これまで延々と運転士の学科講習の話をしてきました。今回はいよいよ、学科講習卒業のための学科試験について書きます。
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運転士は国家資格なので試験実施や問題管理は厳正
運転士は国家資格です。
大手鉄道会社は自前の教習所で運転士を養成していますが、これは国家試験を代行しているわけです。そのため、卒業時のテスト = 学科試験は国家資格試験の性格を持ちます。
したがって、試験は厳格です。
学校のテストだと、先生が生徒に「ここ出題するぞー」と予告することがありますが、学科試験でそんなことはありえません。
試験問題が漏洩しようものなら一大事。問題の管理は、かなりキッチリしているようです。たとえば、教習所には講師の事務室(学校でいう職員室)がありますが、ここに入室するときはメンドクサイ手順があります。
「失礼します。~~クラスの○○です。△△講師に用件がありますが、入室してよろしいでしょうか?」
と入口でお伺いを立てて、「どうぞ」と言われるまで入室してはいけません。学校の職員室みたいに「失礼しまぁーす」の一言でスタスタ入室されると、試験問題をうっかり見られてしまう事故があるかもしれないからです。
(この入室時のお伺いは、運転士の学科講習に限った話ではなく、教習所では365日そうなのですが)
運転士養成の厳しさ 学科試験に落ちたら戻る場所はない!
そして、学科試験の一番厳しいところは「落ちたら戻る場所がない」こと。
もちろん、落ちても会社をクビにはなりませんが、他職に飛ばされたりします。再び運転士になるチャンスが巡ってくることは、ありません。
また、「アイツ学科講習ダメだったんだってよ」という周囲の痛い視線にさらされ、いたたまれなくなって退職するケースもあります。「ダメだったら、今まで通り車掌の仕事を続けりゃええか」なんてノンキな話では済まないのです。
一般的に、運転士は20代半ばという若さで挑戦する職種です。鉄道マンとしても社会人としても、まだまだこれからという若さ。
にもかかわらず、ここで失敗するとキャリアに大きく傷がつき、挽回することは相当難しくなります。この若さで敗者復活が厳しいとは、ちょっと理不尽な気もしますが、それが現実。
学科試験で不合格になることは稀
……と、さんざん脅すようなことを書きましたが、実際には学科試験で不合格になることは稀です。30人のクラスなら、1人落ちるかどうかのレベル。多くて2人でしょう。
というのも、あくまで個人的な感想ですが、こちらの記事で紹介した中間テストに比べると、学科試験は問題が易しいのです。
中間テストは、長丁場の学科講習に喝を入れる目的があります。そのため、意識的に問題を難しくして「落とすための試験」にしてあるのだと思います。
対して、学科試験は落とすための試験ではありません。中間テストが赤点や追試だらけだったとしても、それと同じような状況が学科試験で再現されるかというと、まあないです。
受かって当然だからこそプレッシャーも大きい
現実として落ちる人がほとんどいないことは、実はみんな知っています。先輩たちが運転士になるところを今まで見てきましたからね。
ただ、それは逆に落ちたら相当ヤバいというプレッシャーにつながります。だからこそ、みんな必死に勉強するのです。
例えるなら、サッカーのPKみたいなもの。PKって決めて当然みたいな雰囲気がありますが、だからこそプレッシャーも大きいですよね。
落ちるのは稀で受かって当然。
でも、万が一のことがあったらどうしよう……。もし落ちたら戻る場所がない。そのとき、自分はこの会社でどう生きて行けばいいんだろう……。
そのような恐怖と闘いながら学科試験に臨むのです。
これを克服するには、とにかく勉強するしかありません。学科試験直前は、競馬の最後の直線でムチを入れまくるかの如く、みんな勉強に熱が入ります。この時期の寮は、夜遅くまで活気に満ち、明かりがついています。
今回の記事はここまでです。