『運転士になるまでシリーズ』の続きです。
ここまでは、3ヶ月間にわたる教習所での学科講習・学科試験の模様を書いてきました。学科試験に合格し、教習所を無事に卒業できた者は、運転の現場に配属されて実車講習のステップに進みます。
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指導運転士と一緒に乗務して知識・技能を教わる
「実車講習」では具体的に何をするかというと、見習運転士として、指導運転士(先生)と一緒に乗務します。実際の乗務を通じて、必要な知識や技能を指導運転士から教わるのです。
自動車免許でいえば、仮免許を取得し、教官と一緒に公道に出て練習運転するステップに相当します。
いちおう説明しておくと、見習運転士といえども、実際の営業列車を運転します。見習運転士のための“練習用列車”があるわけではありません。
見習運転士が乗務しているシーン、みなさんも一度くらいは見たことがあるのではないでしょうか。若い運転士がハンドルを握っていて、その横に立っているベテランっぽい人(=指導運転士)が、あれこれ指示を出している。あれです。
乗務を始めるのは「路線ごとのルール」を勉強してから
ただし、教習所を卒業してすぐに乗務が始まるわけではありません。教習所を卒業すると現場に戻る(配属される)のですが、しばらくの間(私のときは2~3週間)は机上で勉強します。
「机上の勉強は教習所で終わったんじゃないの?」と思うでしょうが、さにあらず。乗務するためには、まだまだ座学が必要です。
何を勉強するかというと、路線ごとのルール。
大手鉄道会社だと、複数の路線を運営していますよね。そして乗務員は、会社が運営する路線すべてに乗務できるのではなく、担当する路線、つまり守備範囲があります。簡単に言うと、教育・訓練を受けた路線しか運転できないのです。
運転に必要な知識は、路線ごとに異なります。
- 使用する車両
- 駅の配線やカーブの場所といった線路構造
- 信号機の位置や種類
- 目安となる速度やブレーキ位置
山手線には山手線のルール・知識があり、東海道線には東海道線のルール・知識がある。しかし、教習所の学科講習で、路線ごとのローカルルールまで教えていたら非効率(というかキリがない)です。
そこで、教習所では最大公約数的なことだけ教えておいて、路線ごとに必要な知識は、現場に戻ってから教えるわけです。
野球に例えるなら、教習所で習うのは、野球のルール全般。ポジションごとに覚えておかなければいけない動きや心得は、教習所を卒業して現場に行ってから教わる、という感じです。
座学だけでなく車両講習や運転室への同乗も
さて、現場に戻っての教育は座学が中心です。が、ずーっと部屋に閉じこもって机上の勉強だけをするのではありません。車両基地に行って実物の車両を触ったり、営業列車の運転室に同乗させてもらって線路の配線や信号機の位置を覚えたり……ということもします。
こうして、現場に戻ってから2~3週間ほど、自分が運転する路線に必要な知識・ルールを勉強してから、見習運転士として実際の乗務が始まるのです。
あ、ちなみに私が教習所を卒業したのは12月下旬だったのですが、この勉強の間に、年末年始が挟まりました。通常、現場の鉄道マンは年末年始など関係なく働きます。が、このときは実際に乗務シフトが与えられていないこともあり、一般の会社員と同じような連休がもらえました。鉄道マンになってから、年末年始を連休で過ごしたのは、このときが最初で最後です。