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一部廃止の留萌本線 深川~石狩沼田間の「閉そく方式」はどうなる?

JR北海道の留萌本線は一部を廃止し、バス転換する方向で調整が進んでいるとのこと。深川~石狩沼田間を残し、石狩沼田~留萌間は2023年にも廃止になる可能性。(2022年7月のニュース)

経営効率が著しく悪く、列車本数も少ない路線です。これは他に手がなく、どうしようもなかったのでしょう。……ていうか、一部廃線によって留萌駅は消滅しますが、路線名は留萌本線のままなのだろうか?

「一本の列車が行って戻って来るだけの路線」になる

最初にお断りしておきますが、今回の記事は難しい(専門性が高い)です。ある程度鉄道知識がある人じゃないと理解できないかも……。みなさんの貴重な時間を奪うのは本意ではないので、わからなくなったら遠慮なく離脱してください。

今回のテーマは信号システムの変更です。留萌本線の一部廃線に伴い、これまで使用していた「列車同士の衝突を防ぐシステム」──専門用語では閉そく方式──を見直す必要があります。

現在、留萌本線では、「特殊自動閉そく式」というシステムで衝突事故を防いでいます。まずは配線図をご覧ください。

途中の峠下駅に行き違い設備が設けられている

一部廃止後の形は↓のようになります。

途中で行き違いできなくなりました。深川から出た列車が、終点・石狩沼田でUターンして戻ってくるという運行形態に。

この路線だと、続行列車を運転することはできませんね。フタをされて先行列車が閉じ込められてしまうので。

続行列車を入れるとこうなる

つまり、深川~石狩沼田間に入れる(運転できる)列車は一本だけです。途中で行き違いがなく、一本の列車が行って戻って来るだけの路線になると。

「スタフ閉そく式」が有力そうだが「特殊自動閉そく式」を継続?

鉄道には「列車同士の衝突を防ぐ仕組み」が不可欠ですが、一本の列車が行って戻って来るだけの路線では、「スタフ閉そく式」という仕組みが有力です。超閑散路線向きの方式で、コストがかからないのが長所。

ですので、一部廃線に伴って、現行の特殊自動閉そく式から、スタフ閉そく式に変更するのが常識的な感覚です。スタフ閉そく式に必要な道具は、「スタフ」と呼ばれる通行証一枚だけなので、超安上がり。

ところが、JR北海道の説明によると、「石狩沼田駅で折り返し可能にするためには初期費用4,000万円が必要」とのこと。

これは鉄道マンとして断言してよいですが、単にスタフを導入するだけなら、4,000万円は絶っっっ対にかかりません。ただし、JR北海道が、鉄道素人の自治体を騙してやろうとウソを言っているのではなくて(笑) 実際に数千万円かかるのでしょう。

というのも、おそらくJR北海道は、深川~石狩沼田間をスタフ閉そく式に改めるのではなく、石狩沼田駅に信号設備を新設して、特殊自動閉そく式を継続するつもりではないでしょうか。

単線で怖いのは正面衝突 事故を防ぐ仕組みとは?

繰り返しますが、留萌本線では現在、特殊自動閉そく式という保安システムを用いています。これは単線用のシステムですが、要点だけ拾って説明します。

単線で怖いのが正面衝突です。ですから単線区間では、正面衝突を防ぐために信号設備を工夫しています。どういうことかと言うと、↓図を見てください。

A駅・B駅双方が、相手駅に向かって列車を出そうとしています。これでは正面衝突になってしまうのでアウト。というわけで、安全な形は↓のようになります。

A駅から出発させるなら、B駅は受け入れないといけない。逆にB駅から出発させるなら、A駅は受け入れないといけない。まあ当たり前の話ですね。

信号設備も、こういう考え方を採り入れています。具体的には、A駅・B駅それぞれに方向設定スイッチが存在します。これらを「A発→B着」または「A着←B発」の組み合わせにしないと、信号が青になりません。誤って「A発・B発」の設定にしても、信号は赤のままです。

言い換えると、A駅・B駅の信号設備は繋がって(連動して)います。それによって正面衝突を防いでいるのです。

峠下駅廃止に伴い石狩沼田駅に信号設備を新設?

で、話を留萌本線に戻すと……

いま説明したように、隣り合う深川・峠下両駅は、信号設備が繋がっています。「深川発→峠下着」と方向設定することで、深川駅の信号機は青になり、列車を出発させられるのです。

ここで言う「隣り合う」とは、「交換可能駅として隣り合う」という意味

ところが、一部廃止後の形を再度ご覧ください。

深川駅の“相棒”だった峠下駅が消えました。深川駅から列車を出したかったら、峠下駅の方向設定スイッチは「着」という条件が必須でしたが、峠下駅は消滅したので条件が取れません。

ようするに、深川駅から留萌本線に列車を出発させる際、信号を青に変えられないわけ。

というわけで、新たな終着駅となる石狩沼田駅に信号設備を新設 + 深川駅の信号設備も改修し、「深川・石狩沼田」でやり取りできるようにする。つまり、特殊自動閉そく式を継続し、スタフ閉そく式は採用しない。そのための費用が、JR北海道の言う4,000万円なのかもしれません。

石狩沼田駅に信号設備を作らなくてもよさそうだが……

ここから超高度な話。ついて来られる人だけどうぞ。当ブログの約360記事の中でも、文句なしに最高の難易度です。

実は私、最初は次のように考えていました。

石狩沼田~留萌の廃止時には、深川駅の信号設備(連動装置)を改修し、単独条件で(=隣接駅の方向設定うんぬん関係なしに)留萌本線の出発信号機に青信号を現示できるようにすればよいのでは? そうしておいて、石狩沼田駅には信号設備を新設せず、深川~石狩沼田間はスタフ閉そく式に移行する。

↑のようにしないのは、あくまで推測ですが、次のような理由かもしれません。

今回の石狩沼田~留萌間に続いて、数年後には深川~石狩沼田間も廃線になる(全線廃止の)見込みです。つまり、深川駅から留萌本線へ列車を出すことは金輪際なくなります。

そうなると、深川駅構内の留萌本線関係の信号機や、留萌本線方面へ進入するポイントは、「機能を殺す」必要があります。機能が残ったままだと、函館本線への進路を取ろうとしたら(廃)留萌本線側へ引いちゃった、みたいなミスによって列車が誤進入し、事故になる可能性があるからです。

「機能を殺す」とは、ようは改修ですが、それだと二度目の改修になります。信号設備の改修はめちゃくちゃカネがかかるので、短期間で二度も行うのはJR北海道にとって不利。

その点、石狩沼田駅に信号設備を新設する方法では、何が違うか? 廃線後は石狩沼田駅の設備を撤去すれば、方向設定スイッチによる「深川発→石狩沼田着」という条件が不可能になるので、深川駅から留萌本線へ進路を引くことは物理的に不可能になる。

ようするに、深川駅自身の設備を改修せずとも、留萌本線関係の機能を「実質的に殺す」ことが可能なので安全、かつ改修する必要がない = 余計なカネがかからない、という理屈です。

難しいですが、改修が一度で済むか、二度も必要になるかの違いです。

あくまで私なりの推測です。信号設備に詳しい方がいらっしゃいましたら、ご教示願います。

追記 元駅員のはてなブロガー・エストッペルさんからコメントをいただきました。鉄道に詳しい自信がある人は、下のコメント欄もご覧になると面白いですよ(^^)

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