現役鉄道マンのブログ 鉄道雑学や就職情報

趣味で鉄道好きな人はもちろん、就職・転職等で鉄道業界に興味がある人もどうぞ! 現役鉄道マンが、鉄道の雑学や裏話を語ります。

鉄道の安全を守るために 日勤教育の「あるべき姿」を考える

こんばんは、現役鉄道マンのKYSです。

前回の記事に続いて、日勤教育について書きます。
「前回の記事を見ていない」という方は、まずは↓の記事をご覧になることをオススメします。

blog.kys-honpo.com


日勤教育とは、「見せしめ」や「懲罰」ではない。
法令上の根拠に基づいた、運転士に対する「フォロー教育」である。

これが前回説明した内容でした。

 

日勤教育は現在でも存在する


そもそも、日勤教育はJR西日本だけで行われていたものではありません。
どこの鉄道会社でもやっていました。
(そのはずです)

では、福知山線脱線が発生した後、マスコミに散々叩かれた影響で、日勤教育は廃止されたのか?

答えは「否」です。

大手~準大手~中堅。
この規模の鉄道会社なら、現在でもフツーに日勤教育があると思って間違いないです。
ウチの会社でもあります。
(運転士の数がギリギリの零細鉄道会社だと、ないかもしれませんが……)

「えっ、まだやってるの?」

と思うかもしれませんが、前回の記事でも説明したとおり、日勤教育は省令の趣旨にのっとった措置です。
廃止してしまったら逆にマズイはずです。

日勤教育の「あるべき姿」を考える


問題なのは日勤教育「自体」ではなく、教育の「中身」です。

省令が求めている趣旨からすれば、本来の日勤教育は、以下のようであるべきでしょう。

(1) まずは、ミスの原因と背景を本人に整理させる
(2) そして、なぜミスが起きてしまったのかを分析させる
(3) そのうえで、どうすれば今後は同様のミスが発生しないのか、対策を考えさせる
(4) 対策がキチンと実行できているか、管理者が確認する


たとえば、知識不足によって発生したミスだったと思うのならば、まずは規定やマニュアル類をもう一度勉強しなおす。
そのうえで、管理者側が確認テストを行うとか、シミュレーターで訓練させる。

たとえば、睡眠不足による注意力低下で起きたミスならば、普段から慢性的な寝不足になっていないか、普段の生活習慣を見直させる。
何か心配事があって眠れないのなら、その解消に努める。

また、運転士だけではなく、管理者側も、無理なシフトを組んで運転士を疲弊させていないかなどを見直してみる。

こういうのが、日勤教育の「本来あるべき姿」ではないでしょうか。

こんな内容で「ミスの再発」を防げるのか?


事故の後、JR西日本の日勤教育についての実態がいろいろと報道されていました。

「草むしりをさせられる」
「意味のない文章を延々と書かされる」
「必要以上に罵倒される」

先ほど並べた(1)~(4)のために、こんなことを行う必要はないはずです。
「日勤教育は見せしめや懲罰ではない」と書きましたが、これはペナルティだと運転士に思われても仕方ありません。
(もちろん、日勤教育すべてがこんな内容ではなかったでしょうが……)

JR西日本が行っていた日勤教育は、やはり問題があったと言わざるをえないでしょう。
管理者側が、省令の趣旨をキチンと理解していなかったとしか思えません。
 

論点を間違えてはいけない


事故後の報道では、日勤教育「自体」が叩かれてしまっていたように感じます。

個人的には、最近の「生活保護バッシング」に似ている気がします。

不正受給の問題がたくさん報道されたこともあり、最近は「生活保護なんてけしからん!」みたいな風潮が強いですよね。

しかし、よく考えてみてください。

けしからんのは、生活保護を「悪用する人」です。
生活保護という「制度自体」がけしからんわけではありません。
生活保護という制度自体は、困った人を助けるための立派な制度のはずです。

日勤教育も同じように、「中身のない教育」がいけないのであって、日勤教育「自体」がいけないわけではありません。

そこの認識がゴッチャになってしまい、「日勤教育そのものが悪なのだ」と考えてしまうと、正しい議論ができません。
正しい議論ができなければ、正しい対応もできません。

たとえば、日勤教育を全面廃止してしまったら、運転士のミスを修正する機会がなくなります。
そうなってしまったら、鉄道の安全度が落ちるだけです。
これでは、事故の教訓が活かされたとはいえません。

たくさんの人に正しい認識を持ってもらい、それを元にした議論で適切な対応策を考える。
本記事が少しでもその助けになれば幸いです。