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第三セクター鉄道はフクザツな社内事情を抱えている

今回の記事は、第三セクター鉄道への就職を考える人向けです。↓の記事では、三セク鉄道の基本情報と、「社員をどうやって確保しているのか?」を説明しました。

三セク鉄道は以下のように分類でき、

  1. 国鉄分割時に地方ローカル線を引き継いだ会社
  2. 整備新幹線開業時に並行在来線を引き継いだ会社
  3. 国鉄やJRからの転換とは関係ない新線

そして、近隣の鉄道会社や、出資元である地方自治体からの出向者で要員をまかないつつ、新卒採用を行い、自社採用の社員を育てていく。こんな内容でした。

今回は、「こうした人員構成や背景が、会社にどのような影響を及ぼすか」について説明します。

「鉄道マンとしてのDNA」が社員ごとに違う

繰り返しますが、三セク鉄道の駅員や乗務員などの現場系社員は、開業当初は近隣の鉄道会社からの出向者がメインです。JR旅客会社やJR貨物、私鉄など、いろいろな会社から出向してきます。

実はこれ、かなり大変な話なのです。

鉄道会社って、どこも同じような仕事をしているように見えるかもしれませんが、やはり仕事のやり方は各社で違います。極端な言い方をすれば、「鉄道マンとしてのDNAは会社ごとに違う」わけです。

また、同じJR会社でも、所属によって仕事の慣習や考え方が少しずつ異なります。

どの人間も、自分の出身母体の慣習や考え方が当然だと思っています。そういう人間が集まって一緒に仕事をするわけですから、なかなか大変です。現場をまとめる管理職は、部下の認識の違いを統一していくのに苦労するでしょう。

かなり稀な例だとは思いますが、ひどい場合は、仕事のやり方をめぐって“派閥抗争”が起きた会社もあるのです。

新卒採用(自社採用)で入った人間からすれば、

「あの人とこの人で言っていることが違う」
「結局、どれが正しいの?」

このように戸惑うことがあるかもしれません。まあ逆に言えば、いろいろな考え方を学べるチャンスではありますが。

本社の社員は鉄道の仕事がわかっていない?

駅員・乗務員などの現場系ではなく、本社などでの事務系の仕事については、出資元の地方自治体からの出向者がメインになると前回の記事でも説明しました。

彼らは、いままで鉄道の仕事をしたことがありませんから、鉄道の何たるかを知りません。
(別に責めているわけではないですよ。仕方のない話ですから)

一般の鉄道会社なら、事務系採用で入社した社員でも、入社後の一定期間は駅に配属されるなどして、ある程度は現場のことを学びます。しかし、三セク鉄道にはそれがありません。

鉄道会社から出向している現場系の社員からすれば、「本社の人間は鉄道のことを知らない」と感じるわけです。

会社を前に進めていくためには、現場と本社の協力は必須ですが、こうした事情が原因で揉めたり、連携がうまくいかないこともあるようです。

数年おきに「社内体制」が大きく変わる

また、事務系職員である地方自治体からの出向者は、公務員ですから異動の問題もあります。私の身内にも、役所勤めの公務員がいるのでわかりますが、公務員って数年おきに異動がありますよね。

三セク鉄道に出向してきて数年、ようやく鉄道の仕事に馴染んできた頃に異動になってしまう……。

出向というものは、出向先である程度のポスト(=それなりに偉い地位)を与えられるのが一般的です。つまり、それなりに偉い地位の人間、すなわち課長や部長、役員(社長含む)が数年おきにゴソッと変わるわけです。そして後任として、鉄道の仕事をあまり知らない人がやってくる……。

自社採用組である、部下の平社員は大変だと思います。

偉いポストは出向者が占める 自社採用の社員は昇進が難しい

社内のポストといえば、こんな問題もあります。一定以上のポストは出向者で占められ、自社採用の社員がなかなか昇進できないらしいです。

言い方は悪いですが、JRなどの鉄道会社、出資元である○○県や○○市の再就職・天下り先になっているわけ。

会社立ち上げ時はそれが当然です。新卒採用の自社社員だけでは会社は回せませんから、経験豊富な出向者が上に立ってリードしていく必要があります。また、JRや地方自治体との「つながり」をキープするためにも、ある程度やむをえないでしょう。

しかし、開業から相当年数が経っても、上のポストに自社採用の社員が就くことはなかなかないようです。

「上層部の人間はどうせ外部からの出向者」
「いくら頑張っても昇進できない」

こう思ったら、自社採用の社員たちもヤル気は出ないでしょう。

個人的には三セク鉄道への就職はあまりオススメしない

私の知っている範囲で、三セク鉄道の情報をいろいろ紹介しましたが、いかがでしょうか?

地元へのUターンを考えている学生や、公務員気質の学生にとっては、悪くない就職先だと思います。逆に、「自分はバリバリ仕事をして出世したい」という上昇志向のある学生は避けた方がいいでしょう。

トータルで見ると、いままで説明してきたような複雑な(めんどくさい)社内事情もありますし、給料もそこまで高くはないようです。私個人としては、「そこで働きたいか?」と問われれば、正直ちょっと……という感じですね。

追記 第三セクター鉄道で運転士経験のある、おんじさんからコメントをいただきました。業務内容や社内の雰囲気等について触れられています。興味がある方は、下のコメント欄をご覧ください。

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