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カーボンブラックコンテナの「黒一色」には問題があった

貨物列車はさまざまなコンテナを積んでいますが、その中には、なかなか目にすることのできない「レア度」が高いコンテナもあります。前回の記事では、そんなレア度の高い「カーボンブラックコンテナ」を紹介しました。

↑の記事の内容を簡単に説明すると……

炭素の微粉末であるカーボンブラックを運ぶための専用コンテナ。導入当初は全身真っ黒のコンテナでした。しかし、「とある事情」でコンテナ上部に白色(または赤)の塗装を施すことになった。

こういう内容でした。

黒一色では何がマズかったのか?

さて、なぜカーボンブラックコンテナの上部に、白色の塗装を追加する必要があったのでしょうか?

「外観上の問題」です。

鉄道業界の“お上”である国土交通省から、「黒一色ではマズい」と指摘されたらしいです。(実際は、国土交通省の地方出先機関である「地方運輸局」が、鉄道会社といろいろやり取りします)

なぜ、黒一色のコンテナではマズいのか?

私も詳しいところまでは知りませんが、黒一色では、どうも景観上よろしくないという意味がまず一つあったようです。

それから、黒一色は輪郭が意外とハッキリしません。背景が白や黄色ならともかく、緑や青などのいわゆる「寒色系」の中に置くと、黒一色って輪郭がちょっとボヤける感じになりませんか? さらに、夜だと黒は非常に見にくい。「視認性」は作業を行う上で大切ですから、確かに黒一色は微妙といえば微妙です。

そのあたりをトータルで考慮して、黒一色ではよろしくない、という話になったようです。

しかし、いくら指摘されたからといって、せっかく作ったコンテナを色の問題だけで全廃になどできません。かといって、コンテナ全体を別の色に塗り直すのも現実的ではない。

というわけで、黒一色にアクセントをつけるため、上部に白色の塗装を追加するという一部修正で対応した、という経緯らしいです。

鉄道設備をちょっと変えるだけでも申請や届出が必要

このように、コンテナの色一つとっても、“お上”から指摘されて七面倒な事態が発生することがあります。それを考えると、最近流行りのラッピング車両なんかは大変です。

車両を含め、およそ鉄道設備というものは、その仕様を国土交通省(地方運輸局)に届け出ています。

また、鉄道設備にはいろいろな免許が絡んでいます。たとえば鉄道業務では「無線」を使いますが、これは「電波の利用」ですから総務省への申請・届出が必要、という具合に。

「この設備が不便だから、ちょっと改修して使いやすくしたい」
「この設備はもう使ってないから廃止したい」

と思っても、勝手に改修や廃止はできず、ほとんどのケースで申請や届出が必要になります。

ラッピングとは、車両の外側にフィルムを貼り付ける、一種の改造です。ですから、「外側にフィルム貼るだけだし無届けでもいっか」ではダメなのですね。

ラッピング車両は気軽にできるものではない

“お上”への申請・届出は、それぞれの設備を保守メンテする部署の仕事です。車両改造の場合は、車両のメンテや管理を担当する車両部門。線路関係なら土木や保線の部署、信号設備なら電気系の部署。

私のような、駅員・車掌・運転士コースの人間とは無縁な業務です。

しかし、“お上”相手の申請がいかに大変な仕事かは、なんとなく想像がつきます。書類を出せばそれで終わりではなく、理由や経緯をキチンと説明して、こちらの言い分を通さなければなりません。

車両にラッピングしたいな~、いいですねぇ~やりましょう、わぁ~どのアニメとコラボしようかなぁ~、みたいな軽いノリでできる話ではないんです。

今のご時世、ラッピング車両はあちこちで気軽に見ることができます。しかし、その裏側には面倒もあることを知ると、ラッピング車両を見る目も少し違ってくると思います。

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