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【鉄道会社への就職】就活生は「安全報告書」を読んでみよう

今回は、鉄道会社への就職を目指す学生さん向けの記事です。グループディスカッションや面接で使える内容だと思うので、ぜひ読んで、周りに差をつけてください。

鉄道会社が発表している「安全報告書」ってなに?

近年の鉄道会社のトレンドは、「安全性の向上」です。ホームドアの設置が進んでいることは、その象徴といえます。

グループディスカッションでも、「安全性をより高めるため、鉄道会社はどのような取り組みを行うべきか?」みたいなお題が出るかもしれません。面接でも、「安全のために弊社がどのような取り組みを行なっているか、知っていますか?」と聞かれるかもしれません。

「学生の身分でそんなこと知るか」と思うかもしれませんが、さにあらず。鉄道会社が安全のためにどのような取り組みをしているかは、誰でも知ることができます。それが安全報告書というものです。

鉄道会社は毎年、鉄道事業法という法律の定めにより、安全報告書を作成しなければなりません。安全報告書とは簡単に言えば、

  • 安全を確保するために、どのような取り組みをしているか
  • また、これからどのような取り組みをしようとしているか

これらをまとめたものです。

各鉄道会社は通常、この安全報告書をホームページに載せているので、一般人でも普通に見ることができます。『安全報告書+会社名』で検索すれば、だいたい一発でたどり着けます。

安全報告書を読むくらいはしないと就活戦線で討ち死

ただ、就活中の学生には難しい内容かもしれません。専門用語も出てくるので、同業者でないと理解できない内容も多いです。

ですので、あまり詳しく読み込む必要はありません。だいたいどんな取り組みをしているか、表面的な部分だけでも感じ取れれば、それでいいと思います。

「読むのメンドクセー」と思うかもしれませんが、これくらいは読んでおかないと就活戦線での“討ち死”は必至ですので、頑張ってください(笑)

ただし、予備知識なしにいきなり読み始めても、ポイントが掴めないでしょう。というわけで、今から私が説明する内容を頭に入れておいてください。それだけで、ずいぶん読み解きやすくなると思います。

安全対策のポイントは「人身事故」と「踏切事故」

さて、安全への取り組みや安全報告書という言葉が出てきましたが、そもそも「安全」とはいったい何でしょうか? どういう状態ならば、「安全」といえるのか?

これは、逆に考えるとわかりやすいかもしれません。鉄道によって人が死傷すること。これが安全の逆の状態です。

では近年、鉄道による人の死傷とは、どういった原因が多いのか? その原因を突き止めることができれば、対策を立てて鉄道による死傷者を減らすことができます。

国交省の統計によれば、死傷の原因の多くは、ズバリ人身事故(※)踏切事故。死者に限っていえば、この二つの事故種別でほぼ100%です。

(※)「人身事故」とは、いわゆる「線路内への立ち入りによる触車」と「駅ホームでの触車」を指すと思ってもらえればいいです。ただし、自殺は除きます。

つまり、人身事故と踏切事故を減らすことが、有効な安全対策といえます。人身事故に関していえば、ホームドアの設置は安全向上につながることを誰でも知っていますが、その裏側にはこういう理論があるわけです。

ただ漠然と「ホームドアがあれば安全」と考えるのでは不十分。

 安全の裏返しは人が死傷すること
→統計上、死傷の原因の多くは人身事故(と踏切事故)
→人身事故への対策が大きな課題
→ホームドアの設置は人身事故対策として有効な手段であり、安全向上に大きく寄与する

このように筋道立てた思考ができれば、グループディスカッションや面接の際に、説得力のある発言ができます。

鉄道の安全には国民の理解と協力も必要

ここから先は、もう少し視野を広げるための話です。

安全のための取り組みというと、人身事故対策にはホームドアの設置、踏切事故対策には高架化事業など、「鉄道会社が何をするか?」という視点で考えがちです。もちろん、「鉄道会社が何をするか?」が安全対策の柱であることは間違いありません。が、その視点だけでは不十分です。

他の角度からも見てみましょう。

再度書きますが、死傷の原因の大部分は「人身事故」と「踏切事故」です。これ、鉄道会社が頑張れば100%防げるものではありません。鉄道を利用するお客さん、踏切を横断する通行者、もっといえば「国民全体」の協力が必要になります。

たとえば、歩きスマホをしながらホームを歩いていて線路に転落した。これ、鉄道会社のことは責められないですよね。お客さんの側に「ホームでの歩きスマホは危険」という自衛意識があれば、防げる事故です。

また、踏切内で車が立ち往生した。このとき、非常ボタンの存在を知っていれば、すぐにボタンを押して列車を止めることができます。

つまり、国民全体への周知や啓蒙活動も、鉄道会社が行うべき安全対策の一環なのです。そのため、「安全報告書」には、鉄道会社の取り組みだけではなく、利用者側への協力を呼び掛ける内容が書かれていることもあります。

グループディスカッションや面接で、こうした視点からの議論や回答ができれば、一目置かれるのではないでしょうか。

まとめ

長くなったので、まとめましょう。

  • 鉄道会社は、安全への取り組みをまとめた「安全報告書」の作成義務があり、ホームページで公表している
  • 統計上、鉄道で発生する死傷の原因は「人身事故」と「踏切事故」がほとんど
  • これらの事故を防ぐためには、鉄道会社だけではなく、国民全体の理解と協力も必要

次回は、「安全報告書」が導入された経緯や、人身事故・踏切事故の中身や傾向について、もう少し突っ込んだ情報を書こうと思います。

続きの記事はこちら 安全対策の「根底の考え方」を解説!

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