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【鉄道会社への就職】安全対策の「根底の考え方」を解説!

前回の記事では、「安全報告書」や、鉄道で発生する死傷の原因について、基本的な説明をしました。内容を簡単に振り返ると、

  • 鉄道会社は、安全への取り組み(=現在行なっている安全対策 + 将来予定している安全対策)をまとめた安全報告書を作成する義務がある
  • 統計上、鉄道で発生する死傷の原因は「踏切事故」と「人身事故」がほとんど
  • これらの事故を防ぐためには、鉄道会社だけではなく、国民全体の理解と協力も必要

今回の記事は、その補足や裏話です。前回の記事を読んでいないと、話の流れがわからないかもしれないので、ご注意ください。

ちょっと細かい内容なので、就職活動のグループディスカッションや面接で役に立つかは微妙ですが、参考までに読んでもらえればと思います。

福知山線脱線事故が契機の法改正

2006(平成18)年に鉄道事業法という法律が改正されて、鉄道会社は毎年安全報告書を作成することになりました。

なぜ、2006(平成18)年にこのような法改正が行われたのか?

その前年、2005(平成17)年の福知山線脱線事故を受けての措置です。ようするに、この事故を機に、鉄道会社の安全への取り組みを強化するべきだということになって、安全報告書の作成が義務付けられたわけです。

現在の鉄道業界における「安全第一の意識や取り組み」は、すべて福知山線脱線事故が契機になっている、といっても過言ではありません。鉄道業界のターニングポイントは2005~2006年にあり、というのは覚えておくといいでしょう。

この法改正ではその他にも、社内で「安全管理規程」というものを制定して届け出なさい、という内容もありました。

鉄道業界の「お上」は国土交通省ですが、このときは国交省がだいぶ強引だったようです。「これでどうですか?」と鉄道会社が作成した安全管理規程に対して、「それでは不十分でダメ、こうしなさい」と国交省側が“押しつけ”に近い形で、急いで安全管理規程を決めていったと聞いています。

当時の鉄道を取り巻く社会情勢が、それだけ厳しかったことを示すエピソードです。

踏切事故も「高齢化」している

続いて、踏切事故についての知識を少し。

踏切事故というと、みなさんはどういうイメージを抱きますか?

踏切内に立ち往生した車が列車と衝突、みたいな感じではないでしょうか。つい一昨日(2019年6月19日)も、小田急線内の踏切にて、立ち往生した車と列車が衝突しました。確かに、このような事故が一般的な踏切事故といえますね。

ただし、近年は踏切事故の様相が少し変わってきています。「車と列車が衝突」ではなく、「人と列車が衝突」というケースが昔より増えています。

原因は高齢化です。

高齢者は身体機能が衰えてくるので、踏切内で転倒して動けなくなるとか、遮断機が下りるまでに踏切を渡り切れないとか、そういう事態になるわけです。踏切内で動けなくなった高齢者を救出! みたいなニュース、最近多いですよね。この種の事故への対策も、今後強化していく必要があります。

酔っ払いが人身事故に遭うケースが多い

最後に、人身事故の知識を少し。人身事故とは、「線路内への立ち入りにより触車」と「ホームでの触車」を指すと思ってくれればけっこうです。なお、自殺は除外します。

自殺を除外した場合に多い原因は、酔客による事故。酔っ払ってホームから線路に転落したり、ふらついてホームで列車に接触する事故です。

この酔客による事故には、細かい統計データがあります。受傷者の年齢や性別はもちろん、曜日や発生時間帯のデータもあります。簡単に書いておくと、

  • 事故に遭うのは40代~60代の男性が多い。男性に比べると、女性は極端に少ない
  • 金曜日の発生が突出している。それ以外の曜日は大差ない
  • 21時前後の発生が多い

大きな責任を負っている世代の男性社会人が、一週間の仕事終わりに居酒屋でウェーイ! 若い頃と違い、そこまで酒が飲めるわけではないが、仕事のストレスもあり、ついつい飲んでしまってフラフラになる。そして、帰りのホームで事故に遭う。

この統計からは、そんな光景が見て取れます。分析とか統計学とか、そんな難しいものは一切必要ありません。統計のグラフを見ると、それぐらい傾向がハッキリしているのです。

ですから、金曜日の21時前後にホームに係員を配置するだけでも、事故発生率はだいぶ違ってくると思います。

まとめ

長くなったので、まとめましょう。

  • 「安全報告書」を含め、現在の安全への取り組みのきっかけは、福知山線脱線事故である
  • 踏切事故は車だけではなく、高齢化に伴い、人のケースも増えてきている
  • 人身事故は酔っ払いによるものが多く、その傾向はハッキリしている

ちょっと細かい内容になってしまいましたが、いかがでしょうか。就職活動のグループディスカッションや面接において、抽象論ではなく具体論を求められる場合があるかもしれません。その際の参考になるかもしれないと思って、細かい話を紹介した次第です。

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