ここ数回、大雨に関する記事を書いていますが、今回で終わりにします。今までの話の流れから漏れてしまって、紹介できなかったものを二つほど。
たった数分で状況が変わるゲリラ豪雨
これまで、大雨により「運転見合わせ」の話をしてきました。しかし実は、運転見合わせの前段階として、徐行という措置があります。
つまり、「通常運転→徐行→運転見合わせ」という三段構えになっているということ。
運転見合わせや徐行は、1時間あたりの雨量(ミリ)で決定されます。そして、運転見合わせの発動雨量から、-5~10ミリの値が徐行の発動雨量であることが多いです。たとえば、「1時間あたり30ミリで徐行、40ミリで運転見合わせ」という具合。
しかし実際は、徐行だけで済むことって、案外少ないんですね。
なぜかというと……徐行→運転見合わせの間には、余裕が5~10ミリしかありません。いったん徐行の雨量値に到達したら、その勢いのまま、一気に運転見合わせの雨量値まで上がってしまうケースがけっこうあります。
特にゲリラ豪雨の場合は、雨量計の数値が上がるのが早いです。下手すると、数分で雨量計の数値が10ミリ増えることも。ですから、「雨量計が40ミリになった、徐行だぞ!」と騒いでいるうちに、今度は「50ミリいった、運転見合わせ!」という話になったりします。
ようするに、雨の場合はたった数分で状況が変わることがあるのです。このあたりが、大雨対応特有の難しさですかね。
駅間停車時の特例 最寄り駅まで徐行で移動
あとは、利用者側として知っておくとよい知識を書いておきます。
雨量計が運転見合わせの基準値になった場合、走行中の列車は、その場でただちに停車させられます。駅と駅の間を走行中でも、問答無用で止められます。これが駅間停車というものです。
大雨で運転見合わせになった場合、保線係員による線路点検を行わないと運転再開できません。ですからこの場合、保線係員の点検が終わるまでは、駅間停車した列車はその場から動けないわけです。
しかし、点検には時間がかかります。運転見合わせで列車が止まってから、点検終了・運転再開まで1時間ではまず無理。2時間なら相当早いと思ってください。
線路点検が終わるまでの間、駅間停車した列車の中にずーっと閉じ込められていたらタマランですよね。
トイレのない車両ではトイレ問題が発生します。というか、トイレがある車両でも、トイレの容量オーバーの問題があります。また、体調不良になるお客さんが出ることもあります。
というわけで、乗客の閉じ込めを防止するために、駅間停車した列車を最寄りの駅まで最徐行で動かす措置を行うことがあります。線路点検は終わっていないですが、列車を動かしてよいという特例ですね。
(もちろん、鉄道会社によって対応は違います。行わない場合も当然あります)
もしみなさんが列車に乗っているときに駅間停車に遭遇したら、「やっべええ、閉じ込められた!」と思うでしょうが、最寄りの駅まで動いてくれることがある(かもしれない)ので慌てないでください。
地震の場合は駅まで歩くしかない
ただし、この特例は「雨」に限ったケースですのでご注意を。
たとえば、大地震で運転見合わせの基準値に到達→駅間停車してしまった場合は、残念ながら特例は発動しません。地震の場合は、駅間停車した列車から降りて、線路上を駅まで歩いてもらうしかありません。
2019年6月の大阪北部地震では、多数の列車が駅間停車しました。列車から降り、線路上を歩く旅客の映像を見た人も多いでしょう。もしかしたら、自分は線路を歩いた経験者だという人もいるかもしれませんね。
「地震で駅間停車したときの旅客救済」は、鉄道会社の大きな課題です。