現役鉄道マンによる鉄道雑学のブログ

趣味で鉄道好きな人はもちろん、就職・転職等で鉄道業界に興味がある人もどうぞ! 現役鉄道マンが、鉄道の雑学や裏話を語ります。

強風で運転見合わせ その裏側とは(1)

こんにちは、現役鉄道マンのKYSです。

前回の記事まで、「大雨」による運転見合わせ・徐行について説明しました。
これから台風シーズンなので、大雨は「旬のネタ」だと思った次第です。

今回は、同じ台風つながりで、「強風」の説明をしますね。
利用者側として、知っておくと役に立つかもしれない情報も書きます。

 

瞬間最大風速25~30メートルで運転見合わせ


大雨の場合は、「1時間あたりの雨量」が40~50ミリで運転見合わせや徐行になるケースが多いと述べました。

では、強風の場合は?

「瞬間最大風速」を基準として、秒速20メートル以上で徐行、秒速25メートル以上で運転見合わせ。これが一つの標準です。

ただし、鉄道会社や線区によって多少の違いがあり、たとえば運転見合わせは30メートル以上という鉄道会社もあります。
また、線路脇に防風柵を設置することで、運転見合わせの基準値を緩和している例もあります。(JR西日本の公式ページより)

台風が近づくと、「どこどこで瞬間最大風速30メートルを観測」のようなニュースがよく流れますが、30メートルだと完全にアウトなわけですね。

鉄道は20~30メートルでアウトになることを知っておけば、今後の運行計画について、ある程度の予測はできます。
判断の目安になるので、覚えておくと役に立つかもしれません。

強風への「対処方」は時代によって変わる


ちなみに、強風に対する考え方は、時代によって少しずつ変わっています。

国鉄時代のような大昔は、「瞬間最大風速」ではなく「10分間の平均風速」を基準としていた時代もありました。
また、2000年代前半までは、運転見合わせの風速値はもう少し緩かったです(=つまり、現在より運転見合わせになりにくかった)。

しかし、『余部橋梁脱線事故』『羽越線脱線事故』といった強風で列車が転覆する事故を契機に、強風に対する考え方がより安全な方向に見直され、現在の基準になっています。

線路脇の風速計を探してみよう


説明が前後しましたが、風の強さは「風速計」で測っています。

一定区間ごと、および特定の橋梁上には風速計が設置されています。
そして、強風を計測したときに、風速計設置箇所の前後の区間が運転見合わせ・徐行になるわけです。

「風速計ってどんな形をしているの?」

鉄道の風速計を扱っている会社の一つに、この会社があります。
興味がある人は、リンク先に飛んで写真を見てください。
そして、今度列車に乗ったときに、線路脇にある実物を頑張って探してみてください(笑)

どこの鉄道会社でも、大きな川を渡るような橋梁には備え付けられていると思いますので、そういう場所で探すのがわかりやすいでしょう。
ある程度の風があれば、風車みたいにクルクル回っています。

強風は大雨よりも運転再開が早い


大雨と同様、強風で運転見合わせになった後は、線路設備の点検が必要です。

ただ、大雨の場合は「係員が線路を歩いて点検してから→運転再開」という流れなのに対し、強風の場合は「風が収まれば運転再開→最初の列車に係員が乗って目視で点検」という措置をとることができます。

つまり、風が収まればすぐに運転を再開でき、しかも列車を動かしつつ点検を行うことが可能。
したがって、運転再開や通常速度での運転に戻るまでに要する時間が、大雨に比べればずっと短いです。

「大雨で運転見合わせ」なら駅で粘って待っていても無駄なことが多いですが、「強風で運転見合わせ」なら駅で待っていた方が得策です。
ただ、台風のように大雨+強風がセットになっている場合はダメですが。

強風後の点検では「上」を重点的に見る


最後に一つ、ちょっとした豆知識を。

鉄道の線路設備には、大別して「上」「下」があります。

「上」というのは、架線のこと。
「下」というのは、レールやそれを支える路盤などのことです。

大雨後の点検では、「下」を見ます。
たっぷり降った雨が原因で、路盤の流出や崩壊などが起きることがあるからです。

しかし、強風の場合は「下」は基本的に見ません。
いくら風が吹いたって、線路の基盤が吹っ飛んでいったり、ぶっ壊れたりはしませんよね。

そのかわり、「上」の設備である架線が風で歪んでしまったとか、飛来物が架線に引っ掛かっているとか、そういうことがあります。
ですので、架線の管理を行う部署=電力関係の係員が点検をします。

つまり、一口に線路点検といっても、大雨と強風では「見るべきポイント」「急所」が異なるわけ。
まあ実際、台風の後などは「上」も「下」も点検が必要なので、ワンセットで見たりしますが……。

今回はここまでです。次回も強風に関する話を続けます。