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暖冬だと石油輸送列車は運休になる

温暖化が原因かどうかは知りませんが、近年は暖冬が増えているそうです。2020年なんかは記録的な暖冬で、雪が降らなくてスキー場が悲鳴をあげていたとか。

そして、暖冬になると鉄道にもいろいろ影響があるわけで……。今回の記事では、暖冬にまつわる鉄道雑学をお届けしたいと思います。

【基本知識】石油輸送列車ってなに?

今回のネタは石油輸送列車という貨物列車です。

「石油輸送列車ってなに?」という人、↓ような貨物列車を見たことありませんか?

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基本的に、日本では石油を諸外国からの輸入に頼っています。オイルタンカーなどの船で港に運ばれてきますよね。

港に到着した石油(原油)は、沿岸の製油所で石油製品になります。そして内陸に運ばれていくわけですが、その際、トラック以外にも鉄道で運ぶ手段があります。この、港から内陸部に石油製品を運ぶために運行されているのが「石油輸送列車」です。

内陸に運ばれた石油は、油槽所にいったん移されます。そして最終的には、ガソリンスタンドなどの施設に運ばれるのです。

暖冬だとあまり石油を運ぶ必要がない

石油は、暖房用機器や除雪用機械を動かすための燃料にも使われます。しかし、暖冬だとこれらの機器をあまり使わないため、石油の消費量も少なくなります。すると、油槽に貯蔵されている石油も減りません。

石油は「液体」です。

工場で使うような部品なら、倉庫をちょっと整理してスペースを作れば、新しい在庫を保管することもできるでしょう。ところが、石油は液体ですから、前に入れたものが減らない限り、油槽に空きスペースが生まれません。油槽に空きスペースがない以上、石油を運んできても入れることができない……。

暖冬だと、こういう事態が起こります。つまり、石油輸送列車を運転して石油を運んでも、貯蔵する場所がない。つまり、石油を運ぶ必要がないため、石油輸送列車は運休になります。

寒冬だと石油輸送列車を追加で運転することも

逆に例年よりも寒さが厳しいと、石油の消費量が増えます。この場合は石油が足りなくなるので、追加で石油輸送列車を運転することがあります。

貨物列車の輸送量は、景気や国際情勢などの要素に左右される部分が少なくありません。たとえば、ここ一年、中国との関係悪化に伴い、中国向けの輸出が減っているため、貨物列車の輸送量も減っています。

しかし、そうした社会情勢以外にも、本記事で説明したような、例年よりも気温が高い・低いという気候が影響してくることもあるのです。石油以外にも、例年より夏の気温が高いと清涼飲料水の輸送量が増える、という具合です。

旅客列車に比べると、貨物列車は外部要因に左右される(というか振り回される)度合いが大きいことが理解できると思います。

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本記事の写真提供 marunkunさん

本記事内の写真は、はてなブロガー・marunkunさんが運営する『マルーンの部屋』から拝借しました。写真使用の許可をいただき、ありがとうございました(^^)

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