現役鉄道マンのブログ 鉄道雑学や就職情報

趣味で鉄道好きな人はもちろん、就職・転職等で鉄道業界に興味がある人もどうぞ! 現役鉄道マンが、鉄道の雑学や裏話を語ります。

なぜ鉄道で石油を運ぶのか? 知られざる意外な理由

前回の記事では、石油輸送列車についての雑学を書きました。
「暖冬の場合、石油輸送列車は運休になることがある」という話でしたね。
そして今回の記事も、石油輸送列車の雑学です。

 

長野県で使う石油の約80%は貨物列車が運ぶ


石油輸送列車が走る代表的な県として、長野県があります。
長野県で消費される石油製品の約80%は、貨物列車で運ばれてきたものだそうです。
長野県にとって、鉄道は文字通りのライフラインというわけ。

長野向けの石油輸送列車は、「関東→長野」「三重県四日市→長野」の二つのルートがあります。
「関東→長野」は中央東線を、「三重県四日市→長野」は中央西線を通ります。
いずれのルートでも、運ばれた石油製品は南松本駅(業界では『なんまつ』と呼びます)で取り卸されます。

ちょっと貨物列車に詳しい人ならば、知っている情報ですね。

なぜわざわざ鉄道で石油を運ぶのか?


さて、ここで読者のみなさんに質問。
石油輸送の手段としては、タンクローリーを使った自動車輸送(=移送)が一般的ですが、長野向けの石油輸送にはなぜ鉄道を使うのでしょうか?

「長距離・大量輸送なら、貨物列車が適しているから」
「自動車輸送よりも、貨物列車の方が環境に優しいから」

こういう答えが返ってきそうですね。
おおむねそれで正解です。

ただし、「三重県四日市→長野」の中央西線ルートの場合は、他にも貨物列車を使う理由があります。
「自動車での輸送が難しいから」です。

石油を大量に積んだ車は長大トンネルを通れない


突然ですが、みなさんは中央自動車道の恵那山トンネルという長大トンネルをご存知でしょうか?
岐阜県と長野県の境にある、約8.5㎞のトンネルです。

実はこの恵那山トンネル、危険物を積んだ自動車の走行が禁止・制限されているのです。

これは道路の安全を確保するための措置です。
たとえば、危険な薬品や可燃性物質を積んだ車が、約8.5㎞という長いトンネル内で事故ったら……ヤバいことになるのは容易に想像できますよね。
そういう事態を防ぐため、道路法46条3項の定めにより、恵那山トンネルでは積載物によって車の通行が禁止・制限されるのです。

そして、石油類も通行制限の対象物質になっています。
石油類を大量に積んだ車は、恵那山トンネルを通れないのです。

恵那山トンネルを通らないよう、手前で一旦高速道路を降り、迂回してまた高速道路に乗る手もありますが、効率的ではないですよね。
というわけで、「三重県四日市→長野」の石油輸送は貨物列車の出番というわけです。

ちなみに、恵那山トンネル以外にも、危険物を積んだ車の通行禁止・制限されているトンネルはたくさんありますので、興味がある人は調べてみてください。
NEXCOのホームページや、『長大トンネル 危険物』といったキーワードで検索すればわかります。

貨物路線として大きな意味のある中央東線・西線


先ほども書きましたが、長野県で消費される石油製品の大半は、貨物列車で運ばれてきたものです。
ということは、もし貨物列車で石油を運べないような事態が発生すると、長野県民の生活はガタガタになってしまいます。

具体的には、大雨や地震が原因で中央東線・西線が寸断されたような場合です。
両線とも山岳路線ですから、自然災害には強くありません。

災害に強い路線にするための対策は必要ですが、それを鉄道会社が単独で行うのは負担が大きすぎます。
国や地方自治体との連携が必要でしょう。

また、鉄道が寸断されたときに、いかなる代替輸送の手段を講じるか?
「鉄道がダメならトラックを大量に手配して運べばいい」と考える人もいるでしょうが、トラックドライバーの人手不足が叫ばれる昨今、それは難しいでしょう。
しかも、自動車で石油類を運ぶときには「危険物取扱者」という資格が必要ですから、ますます人の確保が難しい。

そういうことを考えると、鉄道での貨物輸送には大きな意味があることがわかります。
中央東線・西線とも、旅客営業的には地味な路線かもしれませんが、貨物輸送的には重要な路線です。

こうした事実を知っておくと、みなさんの鉄道路線を見る目も少し違ってくるのではないでしょうか。


関連記事はこちら
石油輸送列車の運転はブレーキが難しい
暖冬だと石油輸送列車が運休になる!?

→ 鉄道の豆知識や雑学 記事一覧のページへ
⇒ トップページへ