コロナの影響で、売上・利益がボロボロになる鉄道会社(ウチもです……)が続出する中、ある鉄道会社に注目が集まっています。
大阪・和歌山を走る南海電鉄です。
なんと南海、2020年度上半期の決算が黒字!なのです。
(連結ベースの営業損益)
鉄道各社はボロボロと書きましたが、具体的な赤字額はどれくらいか?
「連結ベースの営業損益」で見てみると、鉄道大手の状況は↓表の通り。
この表を見ておわかりのように、南海だけが黒字になっています。
JRや他の大手私鉄がヒドい目に遭っている中で、なぜ南海だけ黒字なのか?
今回の記事では、その背景を探ってみます。
南海も鉄道事業はコロナの影響でボロボロ
「南海黒字」と書きましたが、まず前提として、鉄道事業自体は他社同様、コロナでボロボロの赤字になっています。
ちょっとデータを見てみましょう。
2019年度上半期は75億円の黒字だったのが、2020年度上半期は52億円の赤字。
航空需要減少で、関西空港アクセス線も大ダメージ。
上の表には載っていませんが、空港アクセス線は「定期外旅客」の落ち込みが激しく、前年と比べて利用者数は20%ほど(=80%減)です。
……という感じで、他社同様、南海も鉄道事業の成績は悲惨です。
南海は「副業の黒字」で「鉄道の赤字」をカバーできている
では南海、鉄道による大赤字をどこでカバーしているのか?
関連事業(副業)です。
ご存知のように、鉄道会社はさまざまな関連事業(副業)を営んでいます。
不動産、流通、ホテル、旅行などなど。
先ほど説明したように、コロナの影響で、南海の鉄道事業は大赤字です。
が、不動産や流通などの副業は、コロナ禍でも黒字になっています。
コロナのせいで鉄道は赤字だが、副業はなんとか黒字。
この構図自体は南海に限らず、他の鉄道会社にも見られます。
ただ、ほとんどの鉄道会社は、副業の黒字で鉄道の赤字をカバーするまでに至らず、トータルで赤字になっていますが。
ところが南海は、副業の黒字で鉄道の赤字を埋めてしまっており、それが今回の黒字決算の理由です。
南海は不動産業・流通業の営業利益率が他社より優秀
なぜ南海だけが、「鉄道の赤字 < 副業の黒字」になっているのか?
南海黒字の“立役者”は不動産業と流通業です。
鉄道会社が不動産業と流通業を手掛けるのは珍しくありませんが、南海はこの2事業の数字が◎です。
具体的には、「営業利益率」が非常に優秀。
営業利益率という単語が出てきましたが、これは「売上のうち、何%が営業利益として残るか?」を示した数字です。
くだけた言い方をすれば、「儲けのパワーを示した数字」のこと。
ようは、高ければ高いほど利益が残りやすい体質というわけです。
南海の不動産業・流通業がどれだけ優秀な営業利益率を叩き出しているか、具体的なデータで見ていきましょう。
不動産業は営業利益率が驚異の約30%
まずは不動産業の数字から。
南海だけの数字を見ても、すごさは理解できません。
数字は「比べる」ことに意味があるからです。
というわけで、首都圏から東急電鉄、中京圏から名古屋鉄道、近畿圏から阪急阪神ホールディングスに登場してもらいましょう。
単純な売上規模でいえば、失礼ながら南海は他社よりもだいぶ劣ります。
が、営業利益率(営業利益 ÷ 売上)では、南海がダントツですね。
「これはコロナ禍での特殊な数字では?」と疑う人がいるかもしれませんので、昨年(2019)年度の数字も出しておきます。
やはり、南海のある意味で異常(?)な数字が目立ちます。
もちろん、決算というものは、数字の処理の仕方や解釈が会社ごとに違ったりするので、一概に同じ土俵で比べることはできません。
が、処理や解釈の違いだけで、ここまで営業利益率に差はつかないはずです。
流通業はコロナ禍でも高い営業利益率
流通業の数字も見てみましょう。
首都圏からは京王電鉄、近畿圏からは近畿日本鉄道、九州からは西日本鉄道にご登場願います。
不動産業に比べると、流通業はコロナの影響でかなり苦しい感じ。
赤字を出している会社もあります。
しかし、南海はわずかながら黒字決算。
赤字を免れただけ立派といえます。
時間軸での比較のために、昨年(2019)度の数字も出しておきましょう。
なぜ南海だけが高利益体質なのか? ……は謎
南海の不動産業・流通業がいかに優秀な数字か、おわかりいただけたと思います。
この高水準な営業利益率のおかげで、鉄道の赤字を埋めるだけの黒字額を生み出せているのですね。
で、ここで気になるのが、「なぜ南海の営業利益率だけがやたら高いのか?」という点。
南海には、なにか特別な強みがあるのでしょうか?
南海秘伝の商売のコツとは?
知らねえ
てゆーか、こっちが教えてほしい
ここまで書いてきてオチがこれではひどいですが、これはさすがに外部からはわからない(^^;)
タイトル詐欺で申し訳ないですが、私にできる分析はここまでです。
いちおう、決算書を数年分ザッと眺めてみると、不動産業は20%後半~30%の営業利益率をほぼキープ。
流通業の営業利益率も、安定して10%前後の数字。
つまり、今年だけたまたま特大ホームランが出たとか、数年前に何かの起爆剤があったとかではなく、昔から安定して高利益体質を維持しているわけ。
組織作りなり商売方法なりにポイントがあるはずです。
そのあたりをご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください。
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