現役鉄道マンのブログ 鉄道雑学や就職情報

鉄道関係の記事が約470。鉄道好きや、鉄道業界に就職したい人は必見! ヒマ潰しにも最適

そもそも鉄道の信号機って何のための設備? ~鉄道から信号機が消える日~(1)

ラーメンにのせられるネギ、おにぎりに巻かれる海苔、お好み焼きに塗られるソース……。

これらはもはや「そこに存在して当然のパートナー」であり、本体とは不可分・一体的な扱いを受けていると言ってよいでしょう。──そういうものを、もう一つ挙げてみましょうか。

鉄道に信号機

線路には、一定距離ごとに信号機が置かれている。運転士は、その信号機を指さして確認し、列車を操縦する。青信号なら高速のまま突入、黄色信号なら少し速度を落とす、赤信号なら停止。

日本の多くの鉄道路線では、こうした風景が当たり前になっています。もはや当たり前すぎて、誰も気に留めないでしょう。

しかしコレ、将来的には消えていく風景であることをご存知でしょうか? もう少し正確に言うと、「信号機という設備」が消えていく運命にあります。

鉄道にとって、存在して当然である信号機は、なぜ、将来的に消えていくのか?

当ブログでは、このテーマに関して「鉄道から信号機が消える日」と題し、数回にわたってお届けします。第1回の本日は、「そもそも信号機とは、どのような目的・役割のために設置されているのか?」を説明します。

「1区間内に1本の列車」によって衝突を防ぐ「閉そく」

信号機とは、いったい何のために存在しているのか? こう聞かれると、案外答えられない人が多いかもしれませんね。

結論から言えば、信号機とは「列車同士の衝突を防ぐために存在している設備」です。が、いきなりそう言われても「?」となるでしょう。まずは鉄道の安全に関する基本的な話から始めます。

先ほど「列車の衝突」という単語を出しましたが、そもそも、なぜ列車の衝突という事態が生じるのでしょうか?

「同じ空間」に「2本の列車」が同時に存在するから、衝突という事態が発生するのです。

逆に言うと、ある空間内には1本の列車しか存在しない形を作れば、他の列車と衝突することはないわけです。2本以上の列車が、同じ空間に同時に存在することを認めない。

これを実現するための方法論としては、路線を一定区間ごとに区切り、それぞれの区間には、1本の列車しか入れないシステムにします。

①路線を区切る

②それぞれの区間内に存在する列車を1本だけに限定すれば、物理的に衝突しようがない

このように、1区間内には1本の列車しか進入させないことで衝突を防ぎ、安全を確保する仕組みのことを閉そくと呼びます。

ここまでは理解できるでしょうか。理解できるのであれば、もう半分以上は進んでいますから安心してください。

「トイレの個室内に人がいるか」はどうやって判断する?

線路を一定区間ごとに区切り、1区間内には1本の列車しか進入させないことにより、列車同士の衝突を防ぐ「閉そく」。

では、この「閉そく」という概念と信号機には、いったいどのような関係があるのか?

正攻法で説明すると、鉄道会社の講習用テキストみたいで難しいので、みなさんの身近にあるもので説明しましょう。トイレのカギです。

汚い例え話になってアレですが、みなさんは外出中、腹痛に襲われて大を出したくなったとします。公衆トイレを見つけて駆け込みました。

このとき、トイレの個室に他の人が入っている・いないは、どうやって判断します?

扉についているカギの表示 = 色ですよね。

中に誰かが入っていて内側からカギをかけられていると、赤表示されます。それを見たら「他の誰かが入っているから、ここには入れない」と判断するはずです。

中に誰もいなければ、カギの表示は青(か無色)になっています。みなさんは、それを確認したうえで、扉を開けて中に入るでしょう。

ようするに、カギの表示が赤なら入れない・青なら入れるという単純な話ですが、実は鉄道の信号機もコレと同じなのです。

赤信号→この先に進入禁止 青信号→進入してよい

例え話はここまでで、鉄道の話に戻ります。先ほど、「路線を一定区間ごとに区切り」と書きましたが、各区間の入口に信号機を建てます。

その区間内に列車が存在するときは、信号は赤になります。区間の入口に赤信号を灯すことで、後続列車の運転士に対して、「この先には他の列車がいるから入れません」と告げるわけです。トイレのカギの赤表示と同じ。

後続列車「赤信号だ、この先には入れないな」

区間内に列車がいなければ、信号機には青(や黄色)を灯します。それを見た運転士は、「この先には他の列車がいないから進入してOK」と判断します。

赤信号なら、信号機より先に進んだらヤバい。青や黄色であれば、信号機より先に進んで大丈夫。つまるところ信号機とは、運転士に対して、「この先の区間に進入してOKかダメか」を示すための設備というわけです。

運転士がキチンと赤信号を見て、その手前で止まってくれれば、1区間内に2列車以上が入る(存在する)ことはありません。

こういう方法で「閉そく」を実現──1区間内には1本の列車しか進入させないことにより、列車同士の衝突を防いでいるのです。

記事の最初の方で、「信号機とは列車同士の衝突を防ぐための設備」と書きましたが、こういう意味です。絵だけで終わるのもアレなんで、ちょっと写真も載せておきましょう。

青信号なので、この先に他の列車はいない

信号機の先に列車が進入すると、赤信号になる。これで後続列車は入ってこられない

1区間内には1本の列車しか進入させない「閉そく」を実現する方法論は、いろいろあります。この記事では、現在日本で主流になっている自動閉そく式を説明しました。難しい表現をすると、「閉そくの取扱い」と「信号の現示」を連動させる方式です。

今回の記事はここまでです。次回に続きます。

関連記事

(次)軌道回路の仕組みを優しく解説! ~鉄道から信号機が消える日~(2)


→ 鉄道の豆知識や雑学 記事一覧のページへ


⇒ トップページへ