数ある鉄道用語の中でも、「出発進行」ほど意味が誤って浸透している言葉は他にありません。
このブログを訪れる人は鉄道好きでしょうから、正しい意味をご存知かもしれませんが、ほとんどの日本人は、ズバリ次のように思っているのでは?
Q.出発進行って、どういう意味?
A.列車が駅から出発(発車)すること
ちっがぁーーーう!!
「出発進行」の正しい意味とは?
まず結論から言うと、「出発進行」の正しい意味は次の通りです。
出発信号機が進行信号を現示している状態のこと
はい、意味不明ですね(^^) この文章で理解できるのは、私のような鉄道マンだけです。というわけで、ここから噛み砕いて説明していくのですが、重要なキーワードは以下の二つです。
- 進行信号
- 出発信号機
① 進行信号とは「青信号」のこと
まず、キーワードその1・進行信号とは何ぞや?
ものすごく簡単に言えば、進行信号とは「青信号」のことです。あの青信号のことを、鉄道用語では「進行信号」と堅苦しく表現します。
ちなみに、黄色は「注意信号」、赤は「停止信号」と呼びます。まとめると↓の通りです。
理解できた人は、次に進んでください。
② 出発信号機とは「駅の出口に設けられた信号機」
続いて、キーワードその2・出発信号機とは何ぞや?
これは丁寧に説明しましょう。まず、鉄道路線は「駅」と「駅間」に分類できます。図で示すと↓の通り。
そして、駅と駅間に分類できるということは、どこかに「境界線」があるわけです。別の言い方をすると、駅の「入口」と「出口」が存在するわけ。
このうち、駅の「出口」に設けられる信号機こそが「出発信号機」なのです。
ちなみに、駅の「入口」にある信号機は「場内信号機」と呼びます。
出発進行は「状態」を表す言葉であって「動作」ではない
- 進行信号
- 出発信号機
キーワードを二つ説明しましたが、理解できたでしょうか? これが理解できたのならば、冒頭の言葉の意味が見えてきます。
出発信号機が進行信号を現示している状態のこと
駅の「出口」に設けられた出発信号機に「青」、すなわち進行信号が灯されている状態。これを出発進行と呼びます。
つまり出発進行とは、出発信号機に進行信号が灯っているという「状態」を指す言葉であって、列車が駅から動き出す「動作」を示す言葉ではないのです。
しかし実際には、「出発進行 = 駅からの発車」という認識が一般的になってしまっていますね。「出発」も「進行」も、その言葉だけを見れば、確かに動き出していくさまを表しているように思えます。ですので、それを組み合わせた「出発進行」が、駅からの発車だと誤認されるのも無理はありません。
というわけで、出発進行とは、「信号機の名称 + 信号の色」を組み合わせた用語であることは理解できたと思います。なお、「信号機の名称 + 信号の色」の組み合わせは他にもいろいろあり、「出発注意」「出発停止」という用語も存在します。