4月25日は、鉄道マンなら絶対に忘れない日です。2005(平成17)年4月25日に発生した福知山線脱線事故。あれから、もう19年が経ちました。
この事故を見た時の衝撃は、今も忘れることができません。いや、私だけではなく、すべての鉄道マンがそうではないでしょうか。
脱線原因は「スピードの出しすぎ」 現場を110㎞/h以上で走行
「ずいぶん前の事故なので忘れてしまった」
「事故の概要をよく知らない」
という人のために簡単に書いておくと、この事故は、列車がスピードを出しすぎてカーブを曲がり切れずに脱線したものです。「なぜスピードを出しすぎていたのか?」については、当該運転士が死亡したため、明らかにすることができませんでした。
脱線現場のカーブですが、この曲がり具合のカーブでは、制限速度は60~70㎞/hほどというのが一般的です。
(曲がり具合が同じでも、諸条件の違いにより、制限速度が異なることがあります)
そして事故後の調査では、列車は110㎞/h以上で現場を走行していたことが明らかになっています。
私の会社の路線にも、事故現場と同じ曲がり具合のカーブは存在します。私も運転士としてこのカーブの運転経験はありますが、「このカーブを110㎞/hで運転したら絶対脱線する」というのが経験者としての感覚です。
車に例えれば、70~80㎞/hで交差点を曲がるようなものでしょうか。そんな速度では、曲がり切れずに事故になるのは明白です。
刑事裁判では何が罪に問われたのか?
さて、この事故は刑事裁判の対象(業務上過失致死傷罪)になりました。JR西日本の歴代社長3名が起訴されました。
ただ、「どういう行為が罪に問われたのか?」について、実はよくわからない人が多いようです。簡単に書いておくと、
- 事故の原因は「速度超過」である
- 諸々の事情から、事故現場で速度超過が発生することを予見できたのではないか?
- それなのに、事故現場に「速度超過を防ぐ装置」の設置を怠った
- そのせいで事故が発生し人を死傷させたのだから、その点について刑事責任を問う
というものです。
この「速度超過を防ぐ装置」として大変有効なのがATS-Pと呼ばれる装置です。もしATS-Pが設置されていれば、確かにこの事故は発生しなかったでしょう。しかし、当時の福知山線にはATS-Pが設置されていませんでした。
日勤教育が事故の原因?
この事故の後、事故原因の背景がいろいろと推測されましたが、その一つに日勤教育というものがあったことを覚えているでしょうか?
簡単に言うと、運転士には「日勤教育」のプレッシャーがかかっていた。そのプレッシャーが原因で、焦って制限速度をオーバーしたのではないか? という推測です。
この日勤教育については、私なりに考えるところを記事にしています。興味がある方は↓の関連記事からどうぞ。これから鉄道会社へ就職を目指す人にも、参考になると思います。