「働き方改革」という言葉がすっかり定着しましたが、「ぶっちゃけ、鉄道会社の労働条件ってどうなの?」と気になる人も多いでしょう。
『鉄道会社の労働条件を説明するシリーズ』の第3弾、今回のテーマは残業です。過酷な残業で過労死、なんて物騒なニュースが流れる現代ですが、鉄道会社はどうなのか?
なお、今回の話は駅員・車掌・運転士といった「運輸系統の現業職」に関してで、それ以外の職種については当てはまりませんので注意してください。
シフト制なので基本的には残業ナシだが……
駅員・車掌・運転士といった現業職は、基本的に残業はありません。これらの職種はシフト制であり、「勤務を行う範囲」が明確に定められているからです。
駅員なら○時から○時まで、車掌や運転士なら、この列車からこの列車まで担当、という具合に仕事の割り振りが決められています。決められた分の仕事をやってしまえば終わりなので、「残業は発生しようがない」のです。
(逆に言うと「今日は予定よりも早く仕事が終わったぁ~」なんてこともないわけで)
といっても、まったく残業がないわけではありません。駅員・車掌・運転士に関していえば、次の三つが主な“残業案件”です。
- 異常時(ダイヤ乱れや自然災害)
- 訓練
- 業務研究
残業案件① ダイヤ乱れなどの異常時
ダイヤ乱れや自然災害などの異常時。これは残業案件としては想像しやすいでしょう。
前日の朝から仕事をしてきて、もうすぐ終了時刻。あーやれやれ、疲れたなあ。
人身事故発生
こうなると、まず所定の時刻には退勤できません。駅員だと、お客さんへの案内放送や払い戻し、ICカードの入場取消などで大忙し。もし自駅で人身事故が発生した暁には、現場の確認や処理、警察や救急隊への対応も必要です。
こんな状況で「お先に失礼しま~す」なんて言えませんよね。
車掌や運転士も大変です。ダイヤが乱れると、「どの列車にどの乗務員を乗せるか」を計画した「乗務員運用」というものが狂ってしまいます。そのせいで、所定の時刻に退勤できない場合があります。
交代乗務員が手配できず、休憩なしでずっと乗り続けることも……。また、臨時列車を出したり、逆に余剰になった列車を車両基地に収容したりするため、乗務員が必要になるケースもあります。
運行管理を行う指令室に勤める指令員なんかは、もっと大変です。自然災害など本当にひどいトラブルだと、36時間働き通し! なんて事態もありえます。朝出勤して、次の日の夜まで働いているわけです。
何か用事があって指令室に電話すると、指令員の声が死にそうになっていたりします……。
残業案件② 能力を維持・向上させるための訓練
続いての残業案件は訓練。
「訓練? なんじゃそりゃ?」と思うでしょうが、たとえば乗務員の場合は、以下のような訓練を行います。
- シミュレーターを使って、トラブルに遭遇した場合の処置を学ぶ
- 列車の運転に関する規定を勉強する
- 最近、社内で起きた事故事例などの情報を周知する
- 実物の車両を使って、故障発生時の処置を練習する
イメージが湧くでしょうか? ようするに、乗務員の能力を保持・向上させるための勉強会みたいなものです。
どこの鉄道会社でも、「乗務員は年間○時間以上の訓練を行う」との社内規定があって(そのはずです)、訓練に参加するために残業になる場合があります。
業務上の問題を解決するためのグループ研究
最後の残業案件は業務研究。
鉄道会社に限らないと思いますが、社員数人でグループを作り、業務上の問題を解決するための研究をする。そして年に一度、社内で各グループを集めて発表会を行う。
みなさんの会社にも、こういう取り組みがありませんか?
この業務研究、シフト(勤務割)の中で「この日に時間をとるから、そこでやって」と指定されたりしますが、それだけでは時間が足りず、残業で対応することもあります。発表会が近くなると、どこのグループもパワーポイントでスライドを作るのに必死です。
残業が月80時間を超えることはまずない
- 異常時(ダイヤ乱れや自然災害)
- 訓練
- 業務研究
一般的に、残業時間が月80時間を超えるとヤバいと言われますが、いま紹介した三つの残業案件では、まず80時間はいきません。極端な話、ダイヤ乱れがなく毎日平和、今月は訓練がない、業務研究の集まりもない。こういう月ならば、残業時間はほぼゼロです。
ですので、駅員・車掌・運転士に関しては、「残業が多かったらどうしよう」という心配はしなくてよいと思います。
ただし、ギリギリの人手で回している鉄道会社の場合は、残業ではなく休日出勤が多いことはありえるので、そこは注意が必要です。OB・OG訪問でちゃんと確認してください。
(法律的には、残業と休日出勤は別物です)
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