現役鉄道マンによる鉄道雑学のブログ

趣味で鉄道好きな人はもちろん、就職・転職等で鉄道業界に興味がある人もどうぞ! 現役鉄道マンが、鉄道の雑学や裏話を語ります。

レール温度上昇 将来は「真夏のローカル線は運休だらけ」になる!?

おはようございます、現役鉄道マンのKYSです。

あちぃー、今日も朝からマジであぢぃ~。

この暑さで、鉄道も参っています。
「温度上昇により運転見合わせ」が、この夏だけでも全国ですでに複数回発生しています。
8月6日には、山形新幹線が暑さが原因と思われるレールの歪みで、一時運転を見合わせました。

今回の記事では、夏の暑さが鉄道にどのような影響を与えるのかについて説明しましょう。

 

地方ローカル線は暑さに弱い


「気温が上昇すると、金属である鉄のレールは伸びてしまいレールが歪む。そのため、運転見合わせになる」


これは一般的にもよく知られた話だと思います。
確かにその通りです。鉄でできたレールは、気温によって伸び縮みします。
保線担当の同僚いわく、「レールのつなぎ目の隙間、夏と冬では明らかに間隔が違う」そうです。

では、レール温度がだいたい何℃くらいになると、運転見合わせになるのでしょうか?

これは「線路規格」によって数値が異なります。

たとえば、線路規格の低い地方ローカル線。
こういう路線は、レール温度が50℃後半あたりの数値に到達すれば、運転見合わせになるようです。

対して、線路規格の良い幹線。
この場合は、60℃前後で徐行、62~63℃あたりで運転見合わせになるのが一般的な数値ではないでしょうか。

このように、線路規格の低い地方ローカル線は、真夏の暑さに弱いわけです。

昔に比べると、日本の夏って明らかに暑くなっていますよね。
この調子でさらに暑くなると、将来、地方のローカル線は真夏の日中に運転見合わせが多発する、なんて事態になるのではないでしょうか。

都会の路線や幹線はあまり心配ない


実際のところ、真夏の昼間には、レール温度はどのくらいまで上昇しているのでしょうか?

私が今まで見てきた中では、猛暑日の昼間ならば、レール温度55℃くらいまでは普通に上昇します。
運転見合わせまであと数℃しかない……のですが、55℃前後で頭打ちになることが多く、私自身も実際に運転見合わせに巻き込まれたことはないですね。

たとえ猛暑日の真昼といえども、60℃の壁はなかなか突破しません。
ですから、線路規格の良い幹線については、運転見合わせの心配はあまりしなくてよいと思います。

工事直後は線路が「落ち着かない」状態


最後に、鉄道会社が夏に気を付けていることを一つ紹介しておきます。
「大掛かりな線路工事はなるべく避けること」です。

なぜ、夏に線路工事を避けるのか?

大掛かりな線路工事を終えた直後は、通常よりも線路の強度が弱い状態になっているからです。

たとえ話としてはちょっと適切ではないかもしれませんが……

たとえば、パンやうどんの生地って、練り上げた直後は「生地が落ち着かない」みたいな表現をしますよね。
それと同じで、線路も工事を終えた直後は、「落ち着かない状態」なのです。
ようするに、工事直後は線路がデリケートな状態になっているわけです。

ここまでは「暑さでレールが歪む」と話してきましたが、実は暑さの影響を受けるのは、レールだけではありません。
私はそっちの専門家ではないのでよく知りませんが、構造物や建築物って、温度変化の影響があるはずですよね。
ですから、レールとその下回りの部分まで含めた「線路全体」が暑さの影響を受けると考えてください。

工事を終えた直後のデリケートな線路に、真夏の暑さが加わると、通常よりも強度が落ちます。
(もちろん、列車が普通に走る分にはまったく問題ないですよ)
そのため、運転見合わせの発動基準値を低めに設定しておく必要があります。

工事を施工したばかりの部分は「要注意区間」の指定を受けるため、レール温度上昇に対しても、運転見合わせの発動基準値が低くなっています。
通常ならば60℃でアウトのところ、要注意区間は57℃でアウト、という具合です。

そういう理由で、夏の暑い時期には、大掛かりな線路工事はあまり行わないのです。
要注意区間が増えてしまうと、運転見合わせになってしまうリスクが高まるので。

ただし、「あまり工事しない」というだけで、まったくないわけではないですよ。
「可能ならば、なるべく夏の工事は避けてね」みたいな感じで、別に禁止はされていませんし、必要ならばキチンと施工します。

お客様からすれば、線路工事などは見えない部分ですが、裏ではそういう苦労があるのだと知ってもらえれば幸いです。