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架線に飛来物で運転見合わせ 原因の大半はビニール

列車運行を阻害する自然災害の一つが強風です。たとえば、台風のときは強風で運転見合わせになることが多いですが、一般的には以下のような基準になっています。

瞬間最大風速25~30m/sで運転見合わせ

この数字を知っていれば、気象情報の数字から鉄道の運行予測ができます。知っておいて損はないでしょう。

架線支障が起きると電車は止めざるをえない

ただ、強風の場合は、風速が25~30m/sに達しなくても運転見合わせになることがあります。

よく起きるのが、ビニールなどの飛来物が架線に引っ掛かったという事態。
(鉄道の現場では架線支障と呼びます)

ご存知のように、電車はパンタグラフで架線から電気を受け取り、その電気で走っています。架線に飛来物が引っ掛かっていると、架線とパンタグラフの接触に影響を及ぼすので、そこを通過できません。そのため、飛来物を撤去するまでは運転見合わせにせざるをえない。

こういう理屈です。

どれくらいの時間で運転再開できるかですが、これはケースバイケースとしか言いようがありません。飛来物の撤去は手作業なので、係員の派遣に時間がかかる場所で架線支障が起きると、運転再開が遅くなります。

ちなみに、電車ではなく気動車(ディーゼルカー)が走っている地域では、こういう事態は起こりえません。気動車が走る線路には、そもそも架線がないですから。

架線支障の「犯人」はビニール系がほとんど

鉄道マンである私の経験上、架線に引っ掛かることが多いものは、以下の通りです。

  • ビニール袋(スーパーの袋やごみ袋)
  • ビニールテープ
  • ビニールカバー(自転車やバイクにかぶせるやつ)
  • 風船
  • ふとん(!)

架線に引っ掛かるモノの大半はビニール系、その中でもビニール袋が多いです。我々の生活に欠かせないビニール袋は、使い捨ての代表選手。自分の手元からビニール袋が一枚飛ばされたところで、「やっべえ!」と感じる人は、ほとんどいないと思います。

しかし、たった一枚のビニール袋が鉄道のダイヤをぐちゃぐちゃにし、何万人ものお客様に迷惑をかけることがあるのです。

ビニール袋は架線に複雑に絡むことがあるので、撤去に時間がかかることもあります。

線路の外から飛んでくるビニールは、鉄道会社からすれば不可抗力であって、対策のしようがありません。国民全体の理解と協力がないと、こうしたトラブルを防ぐのは難しいです。この記事を読んでいるみなさん、ビニール袋は安易に飛ばさないようお願いします。

珍しい架線支障の犯人 風船やふとん

あとは、たまにある例として風船

あるとき、当該のブツを撤去して調べたら、沿線の結婚式場から飛ばされたものだと判明したことがあります。新郎新婦をお祝いするために風船を飛ばしたんですね。お祝いするのはけっこうですが、電車が走っている近くで風船はちょっと……。

この結婚式場には会社として申し入れをし、風船を飛ばすのはやめてもらいました。

みなさんが、もし何かのイベントを企画するとして、風船を飛ばすことがあったら、そのときは近くに鉄道がないかを考慮してくれると助かります。

それから……珍しい例ですが、ふとんが引っ掛かっていたことも。敷き布団ではなく薄手の掛け布団でしたが。おそらく、線路のそばの高層マンションでベランダに干されていたものが、風で飛ばされてきたのだと思います。

付近に電車が走っている高層マンションにお住まいの方、ベランダに布団を干すときは飛ばされないよう注意してください。まあ、布団はビニール袋みたいに架線に絡みつくことはなく、ちょっと棒で叩けば落とせるので撤去は楽ですが。

台風のときは意外と飛来物は少ない

さて、最後にちょっと意外な話を一つ。

架線に飛来物が引っ掛かるトラブルは、どういうときに多いのでしょうか?

「そりゃ~台風のときじゃないの?」

そう予想するのが普通ですよね。しかし私の経験上、台風のときって、飛来物が架線に引っ掛かることは案外少ないんですね。

上で挙げたように、飛来物はビニール系のものが大半です。台風で雨が降ると、ビニールに雨水が付着して重くなったり、どこかにペッタリと貼り付いたりして飛ばされにくくなる。また、仮に飛ばされても、強烈な雨で叩き落される。

おそらく、そういう理由だと思います。

さらに、台風のときは対応要員として保線係員がスタンバイしていますから、トラブルがあっても迅速な対応が可能です。

ですから、飛来物が一番怖いのは雨がなくて風が強い日です。台風が通過した翌日や、春一番のときは要注意ですね。

そういう日は晴れていることも多いため、「平常運行だろう」と利用者側も油断しがち。そこに「架線支障で運転見合わせ」となって、「えっ」と慌てた経験がある方もいるのではないでしょうか。

「雨がなくて風が強い日」に鉄道を使う人は注意してください。出掛ける用事があるなら、鉄道の運行情報をマメにチェックするとか、万一に備えて他のルートを検索しておくとか、それくらいの予防措置はしておいたほうがいいと思います。

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