冬になると、東海道新幹線は雪の影響でたびたび遅れますよね。東海道新幹線をよく利用する人は、ご存知かと思います。
先日、ネットを回遊していたら、『冬の東海道新幹線 なぜ遅れる?』という記事を発見しました。
いちいちリンク先をクリックして記事を読む人はいないでしょうから、中身を簡単に紹介しておきます。
東海道新幹線は冬になると遅れることがあるが、それは岐阜県関ヶ原付近での雪によるものだ → 関ヶ原は地理条件的に、日本海からの雪雲が通りやすい場所である → そうした場所を走っているのだから、東海道新幹線が遅れるのも無理はない(記事の〆)
はい? なんだこの記事?
この記事は、関ヶ原で大雪が降る理由は説明していますが、なぜ雪が降ると東海道新幹線は遅れるのか?──雪と遅延の因果関係にはまったく触れていません。それでいて『冬の東海道新幹線 なぜ遅れる?』と謳っていますから、これはタイトル詐欺でしょ(笑)
というか「降雪地帯を通るので遅延する」なら、東北&北海道・上越・北陸新幹線はどうなるんだ。雪シーズンは毎日1時間も2時間も遅れるか? そんなことはないですよね。
今回の記事では、「なぜ雪が降ると東海道新幹線は遅延するのか?」を説明しましょう。
車体から落ちた氷がバラストを飛ばす → 床下機器に直撃して故障
列車が遅延するとは、どういうことか? 徐行、つまり速度を落として運転しているわけです。東海道新幹線も、線路に雪が積もると速度を落として運転します。
なぜ、線路に雪が積もると速度を落とすのか? 究極的に言えば「安全のため」なのですが、具体的には以下の二点が大きな理由です。
- 雪を巻き上げて車体に付着するのを防ぐため
- 車体に付着した氷が高速で落下するのを防ぐため
「車体に付着」という言葉が出てきましたが、メカニズムを簡単に説明すると……
新幹線は高速で走りますから、その勢い(風圧)で線路の雪をバーッと巻き上げます。巻き上げられた雪は、車体に付着します。付着した雪は次第に固まって氷になりますが、この氷が車体から剥がれ落ちたとき、線路内に敷かれている石(バラスト)とぶつかります。
ビリヤードみたいなもんですね。といっても、雪合戦で雪玉をぶつけるみたいなのを想像するのは大間違い。200㎞/h以上で走る車両から落下する氷は、勢い抜群です。
運が悪いと、氷との衝突で跳ね上げられたバラストが車両の床下機器を直撃し、車両故障につながることもあります。そうした事態を避けるために、東海道新幹線は徐行運転するのです。速度を落として勢いを殺せば、
- 雪の巻き上げ量が減り、車両に付着する雪を減らすことができる
- 車両に付着した氷が落下しても、バラストに勢いよくぶつからない
こういうわけです。
まとめますと、「なぜ雪が降ると東海道新幹線は遅延するのか?」との問いに対する答えは、「①雪の巻き上げを抑えるため ②バラストを跳ね飛ばす危険を減らすため に徐行運転をするから」ということになります。
スプリンクラーで「軽い雪」を「重い雪」に変える
東海道新幹線に少し詳しい人なら、雪対策として線路脇にスプリンクラーがあるのをご存知でしょう。スプリンクラーからお湯をまいて、線路に積もった雪にぶっかけます。
これには雪を融かすという目的もあるのでしょうが、私の聞いた話は違っていて……
先ほど説明しましたが、速度を落として運転するのは「雪の巻き上げを抑えるため」でした。しかし、雪が巻き上がるかどうかは運転速度だけでなく、実は雪側の要素にも左右されます。
どういうことかというと、水分の少ない、いわゆる軽い雪は舞い上がりやすいので、車体に付着しやすい。しかし、水分を含んだ重い雪は舞い上がりにくく、車体に付着しにくい。スプリンクラーで水をまくのは、「軽い雪に水分を含ませて重い雪に変える」という目的もあるようです。
東海道新幹線の教訓を生かして北国の仕様は決められた
こうした東海道新幹線の教訓を生かして、東北&北海道・上越・北陸新幹線では、石を敷き詰めた「バラスト軌道」ではなく、コンクリート丸出しの「スラブ軌道」を採用したそうです。まあ有名な話ですね。
先行した東海道新幹線の犠牲(?)があったからこそ、北国の新幹線は雪でも順調に走れているわけ。そういう意味では、北国に住んでいる方も東海道新幹線の恩恵を受けている……とまではさすがに言えないか(^^;)
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