鉄道には、ダイヤ乱れが付き物です。そんなときは、私のような指令員の出番。乱れたダイヤを元に戻すために、いろいろやります。
臨時列車を運転、途中駅で打ち切り、発着番線の変更、行き違い駅の変更、退避駅の変更……などなど。
ダイヤを正常に戻す作業のことを、専門用語で運転整理と呼びます。今回の記事は、貨物列車にまつわる運転整理の話です。
貨物列車の運転整理 待避駅を変更するケース
貨物列車は、道中どこかの駅の待避線に入って、旅客列車をやり過ごすことが多々あります。A駅で待避を行う貨物列車があるとしましょう。
ところがこの貨物列車、ダイヤ乱れに巻き込まれたため、予定していたA駅での待避を取り止めます。代わりに、B駅かC駅のどちらかで待避を行うことにしました。
ここで読者のみなさんに問題。B駅とC駅、どちらで待避を行わせた方がいいでしょうか? 両駅の図を示しておきますね。
「そんなんどっちでもいいじゃん」と思うでしょうが、この場合なら、なるべくC駅での待避は行わない方がいいでしょう。というのも、C駅は発車した直後に踏切があるからです。
スタートダッシュが遅いので踏切を長時間ふさいでしまう
貨物列車の特徴として、スタートダッシュが利かない点が挙げられます。機関車1両で後ろの重いものを引っ張るので、旅客列車ばりのスタートダッシュをキメることは不可能。どうしても初動が遅いです。
そういう事情があるので、発車直後に踏切がある駅だと、列車のケツが踏切を抜けるまで時間がかかります。つまり、踏切を長時間ふさいでしまうわけです。それはなるべく避けたいですね。
というわけで、C駅ではなくB駅での待避を選択するのがベターと言えます。
(ただし、これはC駅で待避させるのが不正解という意味ではありません。あくまで配慮レベルの問題です。場合によってはC駅を選ばざるをえないとか、C駅の方が後の展開がスムーズだとか、まあ結局はケースバイケース)
こんな感じで、貨物列車の運転整理は、旅客列車とは別の考え方が必要になります。たとえば、「貨物列車の長さ」と「待避線の長さ」を比べなければいけないのも、その一つです。
待避線の長さは駅によって異なり、待避線が短い駅もあります。長編成の貨物列車だと、長い待避線を持つ駅にしか停められない(=短い駅に突っ込んだら後ろがハミ出す)ので、選択肢が限られます。旅客列車だと、そういうことを考える必要はないのですが……。