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鉄道会社の「指令業務」を紹介 (1)運転・営業系の指令

鉄道会社の指令室。部屋の前面に運行状況を示すディスプレイ(路線図みたいなやつ)があって、現在の私は、ここで指令業務に従事しています。

この指令業務ですが、駅員や乗務員とは違い、何をしているのか外からは見えません。そのうえ、従事する人間がそもそも少なく、情報発信する人も稀なので、ますます世間には知られにくい。

乗務員の仕事を紹介した書籍はそれなりにありますが、指令業務に関する書籍は、指で数えられる程度。だったら俺の出番じゃあ、とばかりに今回記事を書いてみました(笑)

本記事で紹介するのは、指令員の「種類」です。一口に指令員と言っても、実はいろいろな仕事があり、職務ごとに分けられています。

  • 列車担当
  • 運用担当
  • 旅客担当
  • 情報担当

列車担当 列車の動きをコントロールする

私の仕事はコレ。列車の動きを直接的にコントロールします。

代表的な業務は、ダイヤが乱れたときに元に戻すことです。臨時列車の設定、運休、行先変更、番線変更、発車や到着順序変更、退避や行き違い駅変更……といったあらゆる技を駆使し、ダイヤを正常に戻します。

専門用語では、これを運転整理と呼びます。

ダイヤを戻すためには、直通する他社の指令と連携しなければならない事態も多いです。お互いダイヤが乱れていると、電話がなかなか繋がりませんが……。運良く電話が繋がったときに、こちらの言い分を強引に相手に飲み込ませる技術が必要になります(笑) そのへんはお互い様ですけどね。

なお、ダイヤ正常時はヒマかというと、そうでもありません。ダイヤ乱れの“芽”はちょこちょこ転がっているので、それを見逃さず“芽”のうちに摘み取るのも大切です。また、関係部署と打ち合わせてイベントや試運転の臨時列車ダイヤを考えたり、工事(後述)の打ち合わせをしたり、資料を読んで勉強したりもします。

本当にボケーッとできる時間もあります。ぶっちゃけると、居眠りしている指令員も……(笑) ただ、これはあまり責められることではなくて、いつダイヤが乱れて休憩なしモードに突入するかわかりませんから、ヒマなときは体力温存しておくのも仕事のうちといえます。

「終電から始発までの間は何してんの? 寝てるの?」

夜間は線路工事が行われるので、それに対応します。もちろん、全員が一晩中起きているわけではありません。「早寝早起きの人」と「遅寝遅起きの人」に分かれて、交代で仮眠をとります。

単に「指令」というときは、この列車担当を指すことが多いです。呼び方は会社によってさまざまで、輸送指令・運輸指令・運転指令といった呼び方が代表的でしょうか。また、指令ではなく「司令」と表記する会社も。

運用指令 車両や乗務員をどう動かすか決める

列車というものは、ダイヤ(運転時刻)を決めただけでは走れません。ダイヤに対し、車両や乗務員を「割り当て」て初めて走れます。ダイヤ・車両・乗務員は「三位一体」なのです。ダイヤに対して車両や乗務員を割り当てていくことを、運用と呼びます。

この、運用部分を担当する指令を運用指令と呼びます。

ダイヤが乱れると、車両や乗務員の運用が崩れます。乗務員がどこかで足止めを喰って戻れなくなるとか、連結予定だった車両が当該駅に到着しなくて増結できないとか、そうした不具合が発生します。

こんなときは、運用指令が車両や乗務員の動きをうまく調整・手配して、影響を最小限にとどめます。乗務員の所属基地と連携して、乗務員運用の再調整をしたり、車両基地に連絡して、臨時に使うことができる車両を調達したり。

その他、車両故障が発生したときに、処置を指示するのも運用指令の役割です。だから、車両の勉強会をやっていたりしますね。

列車担当指令と運用指令は揉めることが多い

で、一つ裏話をしておくと、先述の列車担当指令と、いま紹介した運用指令。

 ケンカが多いです

ダイヤが乱れると、列車担当の指令が運転整理を行うと書きましたが、どうしても車両や乗務員の運用が狂ってきます。車両・乗務員運用に大きく影響を及ぼす運転整理をしようとすると、運用指令は嫌がるんですね。手配が大変になるので。

列車担当「こういう運転整理で行くから、運用の手配は夜露死苦!」
運用指令「そんなにダイヤをいじられたら、運用がぐちゃぐちゃになるわ! フザけんなボケェー!」
列車担当「うるせぇ! ダイヤを正常に戻すのが先なんだヨォー!」

ダイヤを早く戻したい列車担当 vs 運用を狂わせたくない運用指令。ダイヤ乱れで気が立っていることもあり、こんな感じで揉めます。いや、ウチの会社だけかもしれんけど。

お客様目線だと、ダイヤを早く戻してほしいはずなので、列車担当の言い分が正しいと感じるでしょう。ただ、そんなに単純な話ではなくて……。

運用指令も楽をしたくて列車担当にケチをつけるのではありません。あまり運用を捻じ曲げると、乗務員の負担が大きくなったり、ダイヤ乱れ収束後に車両運用を再調整するのが面倒になったりします。それは避けたいわけです。

ようするに、お互いが自分の業務を全うしようとして衝突する。まあ仕方ないです。仲が悪いわけじゃないですよ。

旅客指令 振替輸送の手配や乗継の調整をする

話を戻します。次に紹介するのは旅客担当の指令です。

イメージしやすいのが振替輸送でしょうか。運転見合わせ時に、他会社の指令と打ち合わせて振替輸送の手配をします。終わった後に、振替乗車票を何枚配ったか、現場からの情報を集めて整理もします。

乗継の調整もします。A列車→B列車という乗継をする旅客がいるとします。A列車が遅れたとき、そのままだとB列車へ乗り継げない。こんなときは、B列車の発車を少し待つことがあります。A列車の乗務員を通して、旅客の情報を取得し、列車担当と打ち合わせB列車の発車を調整する。

ダイヤが乱れたとき、現場に情報をバラまくのも仕事。窓口で駅員に運行状況を尋ねると、いろいろ教えてくれますよね。ああいう案内のための元ネタを現場にバラまくのです。もっとも、次に紹介する情報担当の指令ができてからは、そういう役割は薄くなっています。

情報指令 ホームページなどの運行情報を管理する

近年は、ホームページやTwitterで運行情報・列車の在線位置が見られるようになりました。また、改札口付近にディスプレイが設置されていて、そこにも遅れや運休情報が表示されますよね。

こうした部分を管理するのが情報担当の指令。昔はこうした指令はなく、2010年代に新設した会社が多いと思います。まだ未設置の会社も少なくないはずで、その場合は、他の指令がこの情報担当を兼ねることになります。

ダイヤ乱れや運転見合わせ時の例を挙げると、今後の列車の動きを決めて → その情報を配信する、という流れになります。つまり、まず列車担当がどう運転整理するかを決めなければ、情報配信できません。

列車担当としては、運転整理でクソ忙しいときに、わざわざ情報担当に細かく情報を教えるという親切はやっていられません。だから、情報担当の方から「積極的に情報を取りに行く」必要があります。まだー!? この列車どうなるのー!? 教えてー! と催促するのですね。もうちょっと待ってくれ(笑)

「運転・営業系の指令」以外に「技術系」の指令もある

  • 列車担当
  • 運用担当
  • 旅客担当
  • 情報担当

一口に指令と言っても、いろいろな指令があることを理解していただけたと思います。ただ、すべての鉄道会社がこのように細かく担当を分けているのではなく、一つの指令が他の指令を兼務している例もあります。

鉄道会社の指令はこれで全部……ではありません。今回の記事で紹介したのは、「運転・営業系」の指令で、この他に「技術系」の指令も存在します。それは次回の記事で。

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