現役鉄道マンのブログ 鉄道雑学や就職情報

趣味で鉄道好きな人はもちろん、就職・転職等で鉄道業界に興味がある人もどうぞ! 現役鉄道マンが、鉄道の雑学や裏話を語ります。

リニアが必要な理由とは? JR東海の立場から考察

「そもそもリニアって本当に必要なの?」

コロナウイルスによる利用客激減で、JR東海はピンチに陥っているわけですが、これを機に「リニア見直し論」も出てきているようです。

「東京~名古屋~大阪の路線を2本も作る必要はないのでは?」
「リニアは採算が取れないと聞いているが?」
「自然破壊が大きすぎる」

一例ですが、リニア不要派からは、このような意見が出ています。

はたして、リニアは本当に必要なのか?
今回の記事では、そのあたりを考えてみたいと思います。

 

立場によって「リニアは必要か?」の答えは変わる


リニアは本当に必要なのか?

この問いに対する正しい答えは、存在しません。
必要かどうかの見解は、結局のところ「立場」によって変わってくるからです。

それでは、この記事では一体どの立場から見解を述べるのか?

私は鉄道マンですので、鉄道会社の立場から、すなわちJR東海の視点から考察したいと思います。
たとえば自然環境保護の観点からだと、当然ながら別の意見があるはずですが、そういった視点からは論じませんので、ご了承ください。

東名阪ルートの確保が会社の生命線


JR東海は、「リニアがなければ会社は将来潰れる」と思っているのではないでしょうか。

JR東海は、収益の大部分を東海道新幹線から得ています。
別の言い方をすると、東京~名古屋~大阪間の移動需要で稼いでいるわけです。
(もちろん、途中の浜松や静岡などの需要もありますが、全体から見れば割合は小さい)

つまり、「東名阪ルートをしっかり握っておくこと」がJR東海の生命線というわけです。
逆にいうと、東名阪ルートが途中でプツッと切れでもしたら、たちまち干上がってしまいます。

JR旅客会社6社が、現在のようなエリアごとの“住み分け”をしている限り、この構造を変えることは不可能です。
JR東海が「東京や大阪に進出して在来線輸送をやりたいんじゃあーーー!」と希望しても、そんなこと無理ですよね。

東海道新幹線が抱えるリスクとは?


「東名阪ルートを確保するなら、リニアを作らなくても、東海道新幹線をしっかりキープすれば済む話じゃん」

確かにそうなのですが、東海道新幹線はさまざまなリスクを抱えています。

よく言われているのが東海地震。
「いつきてもおかしくない」と言われて久しいですよね。
もし東海地震が起きれば、長期間の運休による売上激減は避けられないでしょう。

自然災害でいえば、富士山噴火もありえます。
大規模な土石流や山体崩壊が起きた場合、東海道新幹線は三島あたりで寸断されるかもしれません。
歴史的にも、富士山は周期的に噴火していますから、ありえないと片づけてはいけません。

それから、未知の怪獣が海から出現して襲ってくるかもしれません。
映画『シン・ゴジラ』でも、巨大不明生物は海から出現しました。
海はまだまだ未知の部分が多く、怪獣が潜んでいる可能性は捨て切れない。
相模湾や駿河湾に近いところを走る東海道新幹線は、怪獣襲来のリスクにも晒されており——

……って、さすがにそれはねぇわ

自然災害以外にも、老朽化という大きな敵があります。
1964(昭和39)年の開業からもうすぐ60年。
列車本数は著しく増大し、最高速度も向上しました。
ようするに、建設当時の予想よりも、設備の痛みが早いはずです。

東海道新幹線を建設した際、設備の寿命を何年と計算していたかはわかりません。
が、遅かれ早かれ大規模修繕が必要になるはずです。
その際、長期間運休は避けられません。

会社全体として採算が取れればリニアには意味がある


こうしたリスクが顕在化した場合、生命線である東名阪ルートは断たれ、JR東海は干上がってしまいます。
そして、リスクが顕在化するときは、いつか必ず来ます。
設備の老朽化は避けられないですよね。
また、地震や噴火などの自然災害は、「来るか来ないか?」ではなく「必ず来る。それはいつ?」と考えるのが正しいからです。

ですから、東海道新幹線以外に東名阪ルートを別に作ろうとするのは、JR東海の戦略として当然です。
おおげさに言えば、JR東海が会社を存続させるために必要なのがリニアなのです。

「リニアは絶対にペイしない」

2013(平成25)年、当時のJR東海社長・山田佳臣氏の発言です。
ようするに、リニア事業は採算が取れない。
この発言は波紋を呼び、「JR東海自身がペイしないと認めているリニア事業を、国土交通省は認可するのか?」という批判も出ました。

が、リニアは単独で黒字を目指す性質の事業ではありません。
リニア開業で利益が減るのは承知の上。
会社全体として赤字にならなければ、生命線である東名阪ルートを強固にするために、リニア事業をやる意味がある。
別の言い方をすれば、東海道新幹線とセットで採算が取れれば、それでOK。

当時の山田社長も、「リニアはペイしない」と言っているだけで、「JR東海が赤字になる」とまでは言っていません。
そもそも、単独で見れば採算が取れていない路線なんて、いくらでもあります。
採算が取れなければダメというのなら、都市圏以外の鉄道網は全部廃止です。

ですので、リニア単独で採算が取れない事実だけを見て、「リニアは意味がない」などと言うのは、ちょっと違うかなと私は思いますね。

前提となる基礎知識があってこその議論


繰り返しますが、立場によって意見や見解は変わります。
私がここで書いたことは、あくまで鉄道会社目線によるものです。
ですから、この他にもいろいろな意見があるはずです。

読者のみなさんの意見はどうでしょうか?

ただ、どの立場で論ずるにせよ、前提となる基礎知識は必要です。
前提となる知識がないまま、気分やその場のノリで議論しても、正しい方向性は得られません。
この件でいえば、「なぜJR東海はリニアを建設しようとしているのか?」は最低限知っておくべきだと思います。
そのために、この記事を書いた次第です。


関連記事はこちら
コロナウイルスの売上減でリニア中央新幹線の開業は遅れる?
リニア開業が遅れるとJR東海は倒産の危機に瀕する?

→ 鉄道ニュース 記事一覧のページへ
⇒ トップページへ