現役鉄道マンのブログ 鉄道雑学や就職情報

鉄道関係の記事が約460。鉄道好きや、鉄道業界に就職したい人は必見! ヒマ潰しにも最適

プロ意識とは何ぞや? 現役鉄道マンが考察してみる(1)

突然ですが、私の好きなブログの一つが↓こちらです。

忘れん坊の外部記憶域

はてなブロガー・珈琲好きの忘れん坊さんが運営するブログですが、先日の記事で「プロ意識とは何ぞや?」について語っておられました。

↑の記事に触発されたこともありまして、私も今回は、プロ意識という言葉について書いてみます。

故・野村克也さんの言葉 プロ意識とは「恥の意識」

プロ意識とは何ぞや?

ある意味では曖昧な言葉ですよね。ズバッと言い表すことは、なかなか難しいかもしれません。ただ、私は「プロ意識とは何ぞや?」について納得したことがあります。故・野村克也さん(元プロ野球選手・監督)の著書を読んだときです。野村さんいわく、

プロ意識とは「恥の意識」である

だそうです。恥の意識とは、ようするに「できないことを恥ずかしいと感じる気持ち」です。プロとして恥ずかしいプレーをお客さんには見せられない。だからプロには上手くなる義務があり、そのために必死になって練習する。

そのようなことが書かれていましたが、「お客さんに対してみっともない仕事は見せられない!」と思って仕事をしている私には、ドンピシャという感じでした。

為すべきことを為す 責任感こそがプロ意識

先ほど紹介したこちらの記事で、珈琲好きの忘れん坊さんは「責任感こそがプロ意識」と書いていました。もう少し具体的に言うと、「自らが為さなければならないことを期日内に必要な品質でアウトプットするという責任感をプロ意識という」とのことです。
太字部分は引用)

私なりに解釈させてもらうと、「為さなければならない」という言葉の裏側には、「できなかったら恥ずかしい」という意識があるはずです。「できなくても別にいいや」と思っている人から、「為さなければならない」という発想は出てこないはずですから。

その意味では、恥の意識と共通した部分がある考え方だと思います。

現代では恥の意識を持たせることが難しいかも

私の若い頃、上司や先輩から「こんなことも知らないのか・できないのか!」と怒鳴られたのは、一度や二度ではありません。その度に「ちくしょう」と感じ、もっとレベルアップしなければと一生懸命取り組んできました。

そのような過程で、野村さんの言うところの「プロ意識とは恥の意識」、珈琲好きの忘れん坊さんが言うところの「プロ意識とは責任感」が身に付いてきたのかなぁと、今になって振り返って感じます。

ただ、私の辿った道を令和の現代で再現させようとするのは、けっこう危険でしょう。「こんなことも知らないのか・できないのか!」と迂闊に怒鳴ろうものなら、パワハラになる可能性があるからです。

そういう事情もあり、最近は上司が部下を叱りにくくなりました。つまり、「できなかったら恥ずかしい」という感覚を、叱ることによって持たせるのは難しいわけです。

「遅れても仕方ない」が“拡大解釈”されていないか?

恥の意識が育ちにくくなった原因は、他にもあると私は感じています。鉄道業界を根本から変えた2005(平成17)年の福知山線脱線事故です。

この事故を境に、「鉄道は定時運転を守ることが美徳」から、「安全が再優先。安全のためなら遅延が発生しても仕方ない」という風潮に変わりました。

それは良いことなのですが、私が気になっているのは、この「仕方ない」がどんどん“拡大解釈”されていき、「仕事が満足にできなくても仕方ない」と安易に妥協する人が増えていないか? ということです。

正直に書きますが、必要な安全確認を行なったためではなく、現場係員の単なる知識不足や不手際が原因で列車が遅れることもあります。こちらのレベルの低さでお客さんに迷惑をかけたのだから、本当に申し訳ない話。しかし、それすらも「まぁ遅れても仕方ないね」みたいな雰囲気で済ませるケースが以前より増えたと感じています。

いや、ウチの会社だけかもしれませんが……。

鉄道運行にはトラブルがつきものですが、かつての「遅れは許されない」という風潮だと、トラブル発生時のマニュアルを頭に叩き込んでおく必要がありました。トラブルが起きてから、ゆっくりマニュアルをめくって確認しているのでは遅延が大きくなる → それは恥ずかしいから、ちゃんと覚えておかなきゃ、という具合です。

それが「遅れてもいい」という考え方だと、「あらかじめ頭に叩き込んでおかなくても、トラブルが起きてからマニュアルを確認すればいいじゃん」という姿勢の社員が生まれても不思議ではありません。というか、実際にそういう社員はいます。

誤解のないよう言っておきますが、私はかつての「遅れは許されない」という風潮の方がよかったと思っているわけではありません。「マニュアルを頭にキッチリ叩き込んでいる社員」と「トラブルが起きてからマニュアルを確認する社員」、鉄道の安全を守る人材としてレベルが高いのはどちらか? という話です。

結局は「背中で育てる」しかないと思う

このように近年では、「プロ意識とは恥の意識」を持たせるのは容易でないというのが私の認識です。では、どうすればよいのか。

私も現在は一応、ペーぺーではなく管理職と呼ばれる立場なので、指導の難しさはわかっているつもりです。正直、口で言って100%を理解してもらうのは不可能でしょう。私自身もそうでしたが、「部下は上司の言うことなんて聞かない。上司のやることを真似する」ですから。

珈琲好きの忘れん坊さんも記事内でおっしゃっていましたが、結局は背中で育てることが必要でしょう。上司や先輩自身が「自分に厳しく」の姿勢で仕事に取り組み、それを部下や後輩に見せていくしかないと思います。

関連記事

運転士に求められるのは「自己アップデート能力」


「定時運行へのこだわり」は安全を損ねるのか?


→ 鉄道会社への就職 記事一覧のページへ


⇒ トップページへ


【外部リンク】忘れん坊の外部記憶域