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新幹線の定期列車を減便 なぜこのタイミングで決定された? 

東海道・山陽・九州新幹線、コロナウイルスによる乗客減で、2020(令和2)年5月11日から定期列車も減便へ。


2020(令和2)年5月7日に流れたこのニュース、すでにみなさんもご存知だと思います。
私もこのブログの中で、「新幹線は利用客が前年比9割減なのだから、定期列車も減便していいのでは?」「現場社員の感染リスクを抑えるためにも減便を」と書きました。
ですので、減便には賛成です。

ただ、今回の措置について、もしかすると読者のみなさんの中には、↓のような疑問を抱いている人がいるかもしれませんね。

「なんで施行4日前というギリギリのタイミングで発表したのか?」

 

「緊急事態宣言の延長を受けて」が普通の見方だが……


確かに、急な決定という印象は否めません。
わずか4日でどうにかできるなら、もっと早くに定期列車を減便するという選択肢はなかったのでしょうか?

別の言い方をすると、利用客が前年比9割減というボロボロの状態になりながら、なぜ3~4月は定期列車を減便しなかったのか?

「そりゃー、緊急事態宣言が終わるはずだった5月6日までは我慢してたんでしょ。で、緊急事態宣言が延長されたから、いよいよ定期列車も減らしてしまおうと」

当初は5月6日までの予定だった緊急事態宣言は、5月31日まで延長になりました。
その決定がなされたのは、5月4日です。
ですから、緊急事態宣言の延長を受けて、定期列車の減便にも手を付けた。

まあ、そう考えるのが普通ですね。
ただ、今回の記事では、あえて少し違った見方をしてみたいと思います。

減便の準備はしていたが決断が難しかった?


読者のみなさんの中で、緊急事態宣言が当初の予定通り5月6日で終わると思っていた人は、おそらく一人もいないでしょう。
4月下旬くらいには、「緊急事態宣言は延長だろ」と予想していたはずです。

JR各社の読みもおそらく同様で、だからこそ間引きダイヤの準備をしておいて、このたびの決定に踏み切ったわけです。
ですから、緊急事態宣言が延長されることは、最初から織り込み済みだったはず。

だったら、ゴールデンウィーク前の4月下旬に、「ゴールデンウィーク明けからは定期列車も減便します」と決めてしまってもよさそうな気がします。
いや、正式決定とまではいかなくても、「仮に緊急事態宣言が延長された場合、ゴールデンウィーク明けから定期列車を減便する可能性があります」くらいの発表はあってよさそうなもの。

もちろん、検討中・未決定の事項は軽々しく発表できない、という事情はあるのでしょう。
ただ、正式決定→発表がギリギリになって混乱を招くよりは、早めに情報提供する方がスマートです。
にも関わらず、わずか4日前の決定・発表となったのは?

これはやはり、「決断の決め手がなくて踏ん切りがつかなかった」が正直なところではないでしょうか。

スカスカの列車を見て、「これはさすがに減便してもいいんじゃ……」と鉄道会社の誰もが思っています。
しかし、みなさんが鉄道会社のしかるべき責任者だったら、その決断ができるでしょうか?

ただでさえ、「列車本数を減らせば車内が混雑して感染リスクが上がる」という意見もありますよね。
また、日本の大動脈である新幹線となると、減便は社会的なインパクトが大です。
後でとやかく言われないとも限りませんから、決断には勇気がいります。

決断の背中を押してくれる「何か」があれば……なんて思ったりしますよね。

国交省の文書による「お墨付き」


背中を押してくれる「何か」があれば……

実は、それが出てきたのです。

緊急事態宣言の延長が発表された5月4日付で、国交省から『新型コロナウイルス感染症対策における鉄道の運行の考え方について』という文書が出ています。
この文書は、最終的には各鉄道事業者へ通達されるわけですが、その中に以下のような記述があります。
ちょっと長いですが、↓引用します。

『顕著な利用者の減少により混雑を生じない等の社会的影響等を考慮した上で、各鉄軌道事業者の判断により減便・運休を行うことはあり得るものと考えている。』

『顕著な利用者の減少や利用者のニーズの実態等を考慮した上で、各鉄軌道事業者の判断により減便・運休を行うことはあり得るものと考えている。』

ようするに「諸事情を考慮した上でなら、減便・運休もあっていいんじゃない?」と言っているのですね。
もっと言えば、減便の「お墨付き」みたいなもので、こういう通達があれば確かに決断はしやすくなります。

それにしても、『減便・運休を行なってもよい』ではなく、『減便・運休を行うことはあり得るものと考えている』という表現が、いかにもお役所らしいですね(笑)

当該文書(PDF)
http://www.mlit.go.jp/common/001343070.pdf

当該文書が掲載された国交省のページhttp://www.mlit.go.jp/kikikanri/kikikanri_tk_000018.html

お墨付きの効果はそれなりにあった?


もちろん、この文書の有無に関係なく、JR各社では新幹線の定期列車減便が検討されていたはずです。
ただ、この文書が“最後の決定打”になって、減便のGOサインが出たんじゃないかなあ……というのが私の見解です。

4日に文書が出たので、5~6日の二日間で会社間や社内での最終調整を行い、7日に発表、という感じでしょうか。

なお、定期列車の減便を発表したのは、東海道・山陽・九州新幹線だけではなく、東北・北陸新幹線もです。
また、私鉄でも定期列車の減便を決めるところが出てきました。
この局面で事態が大きく動いたことを考えれば、お墨付きがそれなりに“効いた”のではないでしょうか。


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