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雪でブレーキが効かない! 運転士のときの経験談

今年も本格的な冬がやってきました。この時季の鉄道マンは、気象情報にとても敏感です。具体的に言うと、「雪が降らないか?」を常に気にしています。特に運転士目線だと、雪はとても厄介なのです。

今回の記事では、私の運転士時代、雪で怖かった思ひ出を語ります。

ブレーキを掛けてもスケート状態!

私が見習運転士として、実際に列車のハンドルを握り始めたのは1月でした。しかし、幸か不幸か、その年は一度も雪を経験しないまま冬を終えました。

そのまま試験に合格して、その年の夏には独り立ち。そして迎えた初めての冬のある日、がっつり雪が降りました。しかし、私は正直なめていました。「雪の運転かぁ~、ちょっと楽しみかも」と阿呆極まりないことを考えていたのです。若気の至りにもほどがある。

乗務交代して最初の停車駅。雪のせいでブレーキの効きが悪く、滑るのはわかりきっていたので、早めにブレーキを掛けましたが……

スケート状態ィィィ!!!
((((;゚Д゚))))

あああああヤバいヤバい!!!!!
これヤバいやつだよおおぉぉ!!!!!

全身の血液が逆流し、毛が逆立つような感覚に襲われました。出川の「ヤバいよヤバいよ~」みたいな悠長な話じゃない。運転士としての本能が、すぐに最大ブレーキを入れさせました。考えるより先に手が動くというのは、ああいうことを言うのでしょう。

なんとか所定停止位置に停車。

私は列車の運転大好き人間で、仕事が楽しくてしょうがなかったのですが、運転士になって初めて「運転が怖い。やりたくない」と感じました。その後も、まあ滑る滑る。経験1年程度でたいした技量もなかったくせに、よくオーバーランなしで済んだものだと、いま振り返って感心します。

次の運転士に交代してホームに降りたときには、もう疲れ切っていました。まだ雪が降っており、しんしんと冷え込むホームなのに、顔がものすごく火照っていたのをよく覚えています。つか、まだ仕事始まったばっかなんですけど……。

雪で滑ったら運転士には対処のしようがない

「雪で滑ってブレーキが効かない!」となったとき、運転士はどうするのでしょうか。私の経験および先輩運転士などに話を聞いて得た知見は、以下の通りです。

 神に祈る

「ちょっと何言ってるのかわからない^^;」と思う人がいるかもしれないので、もう一度書きます。ブレーキを掛けても効かない場合、運転士にできることは一つだけです。

 神に祈る

そもそも神は存在するのか? という疑問は置いといて(笑) 雪で滑ってブレーキが効かない場合、運転士には打つ手なし。止まるか止まらないかは運次第。「そんな無責任な」と思うでしょうが、事実なので仕方ありません。

理論的なことを言うと、鉄道車両のブレーキというのは車輪とレール間の摩擦力が必要ですから、その摩擦力が雪で失われた場合、他に手段がないのです。『きかんしゃトーマス』で、いたずら貨車に押されて暴走した機関車が「誰か止めてえええぇ!」とか叫んでいますが、状況的にあれと大差ないです、ハイ。

降雪時の運転のコツは言語化できない

私は3年ほどしか運転士をしなかったのですが、毎年雪に当たりました。2年目、3年目ともなれば経験値が蓄積されてくるので、さすがに「やっべええぇ!」と慌てることは減りましたが、雪の運転が怖いのだけは変わりなかったですね。

「雪の運転に何かコツはあるの?」と質問された場合、ぶっちゃけ、「こればかりは実際に経験して身体で覚えるしかない」としか言いようがありません。今の時代、身体で覚えろ的な指導はダメとされていますが、雪の運転のコツだけは言語化できないです。少なくとも私には。

先ほどの「神に祈る」とか「運次第」とか、プロの鉄道マンのくせに無責任なことばかり言っている記事で申し訳ないですが、それが正直なところです。

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