日本人の多くは、「単なる硬いうどん」を「コシのあるうどん」と勘違いしているのではないか──?
いきなり何の話? と思うでしょうが、鉄道グルメの話です。今回は、さぬきうどん食べ歩き旅行の思ひ出を書きます。
職場の先輩からみっちり「うどんレクチャー」を受ける
私の趣味は将棋なのですが、地元の大会だけではマンネリがきます。独身時代、年に1~2回は旅行を兼ねて、他の地方の大会に遠征していました。
その年は、香川県坂出市で開かれる大会に参加することに。
せっかく香川に行くのだから、さぬきうどんの食べ歩きでもしようかな。そう思ってインターネットでいろいろ調べましたが、イマイチよくわからない。職場に香川出身の先輩がいたので、オススメの店を聞いてみることに。
先輩の目の色が変わる。
とりあえず、自分で調べた情報を出してみる。
いきなりダメ出しを喰らう。
JR四国、ディスられる(笑)
つーか、店名に即座に反応できる先輩すげえ。
ようやくOKが出る(^^;)
こんな感じで話が進み……
「単なる硬いうどん」を「コシがある」と勘違いしていた
こんな感じで先輩からレクチャーを受けた私は、香川にやってまいりました。『さか枝』と『竹清』の2軒でかけうどんを食べます。
感想
超うまかったああぁぁ……
この2軒で、自分の中の「うどん観」が変わりました。うどんって、こんなに美味しい食べ物だったのね。
なにより、本物のコシのあるうどんを体験できたことが衝撃でした。
さか枝も竹清も、口に入れた瞬間は「ん? 柔らかい?」という感じです。ところが、歯で噛み切ろうとすると、心地よい弾力で押し返してきます。絹のような柔らかさの中に弾力という、ある意味矛盾した要素を見事に兼ね備えているのですね。
心地よい弾力感とのど越しの良さが両立している。柔らかいためアゴが疲れず、味や食感をじゅうぶんに楽しめる。
自分が今まで「コシがある」と思っていたのは、単なる硬いうどんだったのか……と軽くショックを受けました。言ってみれば、小麦粉の硬いガムをくちゃくちゃ噛んでアゴを疲れさせることを、「コシがある」と喜んでいたわけです。
亀城庵のかけうどんは「つゆ」が美味しかった
この日の宿泊は、坂出駅近くのビジネスホテル。18時くらいに坂出駅に降り立ち、本日最後のうどんを駅構内の『亀城庵』でいただきます。はい、ようやく鉄道グルメの話ですね。
亀城庵の名物は「海老天と揚げ餅のぶっかけ」ですが、あえて「かけうどん」を注文。「一番シンプルなかけうどんにこそ、店の実力が表れる」という意味不明な哲学を持つ私は、この日のうどんを全て「かけ」で通しました。本日摂取したのは、小麦粉(=うどん・天かす)とネギだけ(笑)
さて、亀城庵のかけうどん。麺はもちろんでしたが、つゆが美味しかったです。当時の旅行メモには、
と、痛いポエマーのような感想(笑)が記されていました。
坂出駅といえば、いわば四国の玄関口。その駅ナカでこれだけのうどんが食べられるとは、四国とはげに恐ろしき場所です。
うどんパワー(笑)で強豪を倒す金星ゲット
翌日は将棋。
アマチュア王将戦の四国地方予選という大会です。
将棋大会って、普通は都道府県単位で区切られており、ようするに地元の人しか参戦できません。しかし、アマチュア王将戦の地方予選はちょっと特殊で、全国どの地域からも参戦可能です。そのため、全国から強豪が集い(関東から遠征とかザラ)、すごいレベルの高さになります。
予選の初戦。
相手は元奨励会三段で、全国大会優勝の経験もあるお方。この将棋のハイライトが↓図。
盤面の手前が私。
30秒将棋という時間切迫の状況。相手が金を打ってきたところで、龍を逃げたくなりますが……ここで決めに行った自分をほめたい(笑)
▲2四桂!△同歩▲2三銀!△同玉▲1四角……という捨て駒連発で相手玉を討ち取り、金星ゲッツ。
こ、これがうどんパワーだ……(ゼェゼェハァハァ
予選を突破して本戦トーナメント1回戦。相手は、アマチュア竜王戦で優勝経験のあるお方。
なにこのボスラッシュ
いや、こういう展開もありうるのがアマチュア王将戦です……。ここであえなく撃沈し、私の大会は終わりました。
亀城庵は閉店 もう一度食べられなかったのが心残り
帰宅は翌日のため、昨日と同じビジネスホテルでもう一泊。夕食は再び亀城庵に行きました。
今度は名物の「海老天と揚げ餅のぶっかけ(冷)」をいただきます。プリっとした海老天に、サクッモチッとした揚げ餅。そこになめらかなうどんが絡み、食感がにぎやか。揚げ物の温、うどんの冷、このコントラストが雪国の露天風呂を連想させる。そして、やっぱりつゆが美味い。
そんな味わいのうどんを、ペロリと平らげました。
──残念ながら、私が亀城庵を訪れたのは、これが最後になりました。数年後に閉店してしまったからです。閉店情報を事前に知っていれば、もう一度食べに行ったのですが……。それが心残りですね。
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