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JRの2021年度決算から 「カネの切れ目が安全の切れ目」にならないか心配

2022(令和4)年度に突入して1ヶ月以上が経ち、ゴールデンウィークも終了。そんな中、鉄道各社の2021(令和3)年度決算が出始めています。

2021年度の流れとしては、「前半はコロナ禍からの回復傾向がみられたが、オミクロン株が出てきた後半は失速」でしょう。当初は黒字決算を見込んでいた会社も、オミクロンの影響で結局赤字、というケースがあったようです。

JR旅客会社の決算状況

2021年度決算、JR旅客会社の数字を見てみましょう。四国と九州はまだ決算が出ていないので、北海道・東日本・東海・西日本の4社の数字です。なお、数字とは比較してこそ意味があるので、過去の数字と並べます。

  • 上段 2018年度 コロナの影響なし
  • 中段 2020年度 コロナの被害甚大
  • 下段 2021年度 直近決算

という形で示してあります。

ドン底は脱したものの、コロナ前には到底及ばない、まだまだ悪い数字です。営業損益の段階ですでに赤字になっています。これは絶対的に収入が足りないことを示しています。コロナ禍による旅客減少は、どうしようもありません。

「修繕費」が大幅に減少 カネが厳しいので先送りしている?

JR東日本・西日本の決算書(損益計算書)を眺めて気になったのが、修繕費という項目です。ここ数年の数字を表にしてみます。

2021年度で金額がガクッと減っています。JR東日本は、毎年3,000億円程度で推移していたのが、直近の決算では約2,450億円。JR西日本は、毎年1,600億円程度で推移していたのが、直近の決算では約1,370億円。

もちろん、技術の向上でコスト削減できている面もあるでしょう。が、それだけでこんなに減らないはず。2021年度はいよいよカネが厳しくなったので、やむをえず先送りする案件が増えたのではないでしょうか。ウチの会社もそうですし。

知床観光船の事故は「カネの切れ目が安全の切れ目」ではないか

こうなってくると心配なのが、「安全維持のために必要な修繕がキチンと行われるのか?」です。

鉄道業界ではありませんが、たとえば4月に起きた知床観光船の沈没事故。この事故では、衛星電話が故障・無線のアンテナも破損し、必要な通信が満足に行えない状況にあったようです。また、以前の事故で生じた船体のヒビを放置していたという話もあります。

これ、結局は「カネがなかったから」ではないでしょうか。

私の勝手な推測ですが、会社側も好きで故障を放置していたわけではないはずです。カネがあれば、キチンと修理を行なっていたと思います。

それができなかったのは、現実としてカネがなかったからという可能性は低くありません。実際、知床観光船は資金繰りが相当厳しかったという情報もあります。

また、この事故では、天候が荒れ気味なところを無理に出航してしまったようです。コロナ禍で経営が厳しい中、せっかくの売上を逃すのが嫌だった心理もあったはず。経営状態が安定していれば、心に余裕を持って「出航中止」の判断を下せたかもしれません。

「カネの切れ目が安全の切れ目」が私の持論なのですが、知床観光船の事故は、これが原因の一つではないでしょうか。

安全はタダで確保できるものではない

「カネの切れ目が安全の切れ目」は鉄道でも同様だと思います。コロナ禍で厳しい経営状況が続けば、鉄道会社も同様の道を辿るかもしれません。財政状況が厳しい地方の鉄道会社で事故が多いのは、決して偶然ではありません。

カネが厳しいのはわかるけど、安全に関する部分はちゃんとやってよ。そう思う人もいるでしょう。しかし、線路工事を請け負う業者や、機器メーカーに対して次のように言えるでしょうか?

安全のために必要なので、工事や機器更新はちゃんと行います。ただし、ウチの会社は財政状況が厳しいので、無料でやってください。

これで「ハイそうですか、無料でやらせていただきます」と頷くバカな業者やメーカーはいないでしょう。いくら安全のために必要な措置とはいえ、慈善事業ではありません。安全確保のために先立つものはカネです。

また、カネがなければ社員も確保もできません。安全を担う人材の育成もできません。

社員のみなさん、安全のために必要なので、工事や機器更新はちゃんと行います。ただし、業者やメーカーに支払う費用が優先なので、みなさんの給料は遅配やカットもやむなしということでヨロシク。

これで「わかりました! 会社も苦しいからしょうがないですね」などと許容する社員もいないはず。

知床観光船も、退職する社員が増えて人手が厳しくなり、労働環境がブラックだった、なんて情報もあります。人手不足も、結局のところはカネの問題に行き着きます。

安全確保には健全経営が必要 一刻も早く以前の日常へ

赤字経営が続くと、結局は安全が脅かされていきます。そこで「カネが厳しいのはわかるけど、安全意識を持ってちゃんとやってよ」などと心の問題に落とし込もうとする方が、よほど安全軽視ではないでしょうか。

知床観光船の事故を契機に、罰則強化や監査の強化といった方針も打ち出されています。それはけっこうなのですが、国には「必要なところにカネが行き渡っているか?」も併せて考えてほしい。

コロナ禍による売上減少で、ボロボロになった会社は山ほどあるでしょう。安全に関する部分にカネを回せず、実はヒヤヒヤしている会社は少なくないはず。先ほども書きましたが、ウチの会社でも、カネが確保できずに機器更新先送りという案件があります。

一方で、「コロナバブル」も存在します。

たとえば、私はここ2年間、飲み会を一度もしたことがありません。たぶん、多くの人はそうでしょう。では居酒屋を運営する会社は、どこも客が入らず鉄道会社のようにボロボロかというと、そんなことはなくて、決算書を見ると「助成金収入」で黒字になっているケースが少なくない。

助成金(協力金)は、「入るはずだった売上の補填」という性格のカネですが、鉄道業界にはそんなものありません。

こうした配分が適正かどうか、ちょっと見直してほしいところです。

もっと根本的なことを言うと、いつまでコロナ騒ぎを引っ張るんだという感じです。今後も、「油断したら感染者がまた増えるぞ」「新たな変異株が出てくるかも。警戒を怠るな」という感じでブレーキを踏み続けるのではないでしょうか。

そうして経済の停滞が続き、鉄道会社の経営が傾いて、「カネの切れ目が安全の切れ目」になってしまわないかが心配です。そうならないためにも、いい加減、リスクに見合わない過剰なコロナ対策はやめて、通常生活へ戻る出口に向かうべきだと思うのですが……。

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