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JR東海の新たな雨規制をやさしく解説! (1)

2020(令和2)年5月15日、JR東海は在来線において、新しい降雨運転規制の仕組みを導入すると発表。
「土壌雨量」という指標や、土石流の危険性を評価するシステムを導入する。


降雨運転規制とは、大雨が降ったときに、列車を徐行させたり運転を見合わせるルールです。
JR東海は、1972年(国鉄時代ですね)以来、50年近く続いてきたルールを改正するとのこと。
一般の方には地味なニュースかもしれませんが、私のような同業者にとってはビッグニュースです。

↓JR東海から公式発表された資料
https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000040472.pdf

この資料、一般の方が読むには、ちょっと難しいかもしれません。
そこで今回の記事では、JR東海が新しく導入した仕組みを噛み砕いて解説します。

 

雨規制はどのように行われる? 現行の仕組みを解説


新たな仕組みについて説明するためには、現在の仕組みがどうなっているかを知らなければいけません。
というわけで、まずは現在の雨規制の仕組みをザッと解説しましょう。

「大雨で徐行や運転見合わせ」というからには、雨がどれだけ降ったかを計測しなければいけませんが、そのために使われるのが雨量計です。

一般的に、雨量計は数駅ごとに一つ設置されています。
イメージとしては、↓の図のような感じです。

f:id:KYS:20200519035025p:plain


駅に設置された雨量計が、一定の雨量(=これを「規制値」と呼びます)を計測すると、付近の区間が徐行や運転見合わせになります。
たとえば、B駅の雨量計が規制値に達すると、A駅~C駅間が徐行or運転合わせになる、という具合。

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同様に、D駅の雨量計が規制値に達すると、C駅~E駅間が徐行or運転合わせになる、という感じ。

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「拠点駅」に雨量計を設置して、前後数駅分の区間を管理する。
これがJR東海(というか全国の鉄道会社)の現行の仕組みです。

キーワード解説① 時雨量


さて、雨量計がどれくらいの雨を計測したかで徐行や運転見合わせが決まるわけですが、その指標として用いられるのが「時雨量」です。

時雨量とは、ようするに「直近1時間あたりの雨量」のこと。

どのくらいの時雨量で徐行や運転見合わせになるかは、一律ではなく、路盤の状態や線区によって異なります。
たとえば、路盤がしっかりしている幹線ならば50ミリで運転見合わせ。
対して、路盤が弱めの山岳路線などは40ミリで運転見合わせ。
そんな感じです。

キーワード解説② 連続雨量


ところが、徐行や運転見合わせの判断指標が「時雨量」だけでは不都合もあります。
時雨量は直近1時間の雨量なので、数時間にわたって大雨が続いた場合に対応できないのです。

たとえば、時雨量50ミリで運転見合わせになる区間があったとしましょう。
この区間で、時雨量40ミリの雨が8時間!も続きました。

このケース、「時雨量は50ミリに達してないんだから、運転見合わせにしなくていいじゃん」と判断するのは安全でしょうか?
40ミリの雨が8時間も続いたら、路盤が水をたっぷり含んで危ない、と判断するのが常識的な感覚ではないでしょうか?

こういう場合に登場する指標が「連続雨量」というものです。

連続雨量とは、ようするに「降り始めからの累積雨量」と解してもらえばOKです。
たとえば、連続雨量の規制値が300ミリだったら、40ミリ × 8時間 = 320ミリはアウトになります。
時雨量50ミリを一度も計測していなくてもアウトです。

改正のポイント 「連続雨量」を廃して「土壌雨量」を導入


ここまでの話をまとめましょう。
現在の仕組みのポイントは、以下の二つです。

・数駅ごとに一つの雨量計を設置している
・「時雨量」「連続雨量」という二つの判断指標がある


さて、いよいよJR東海が新しく導入した仕組みの話といきましょう。
改正のポイントを一言でいえば、↓の通りです。

「連続雨量」を廃して「土壌雨量」という指標を導入

「土壌雨量」という新しい言葉が出てきました。
JR東海の資料によると、『土壌中に浸み込んでいる水分量』のことだそうです。

そもそも、なぜ大雨が降ると徐行や運転見合わせになるのか?
路盤が水を含んで緩み、重い列車が走ったときに崩れる危険があるからですよね。

ですから、「どれくらい雨が降り続いたか?」ではなく、「土壌がどれくらい水を含んでいるか?」すなわち土壌雨量で判断できるのであれば、そちらの方が適切です。
それを実現する仕組みを、JR東海は長年の研究によって具現化し、このたび導入するわけですね。
ここが大きな改正ポイントです。

長年の常識に風穴を開けた!


現行の仕組みである、

・数駅ごとに一つの雨量計を設置している
・「時雨量」「連続雨量」という二つの判断指標がある


これらは、長年にわたって全国の鉄道会社で使われてきた仕組みで、“業界の常識”と言って差し支えありません。
(ウチの会社も、この仕組みを採用しています)
JR東海は、ここに風穴を開けたわけで、それが冒頭でビッグニュースと書いた所以です。

さて今回、JR東海は、「土壌雨量」以外にも新たな仕組みを導入しています。
資料で、土石流発生危険度評価システムとかレーダ雨量とか書かれているのがそれです。
それについては、次回の記事で説明します。

続きの記事はこちら JR東海の新たな規制をやさしく解説! (2)


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