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鉄道マンが公園の砂場で「開削トンネル」を作ってみた

トンネルを作るときに、「穴を掘る」のではなく「埋めて」作る

これで「あーハイハイ」とすぐにわかる人は、トンネルの知識がありますね。「トンネルを埋めて作る???」という人は、ぜひ今回の記事をお読みください。

リニア問題を調べるうちにトンネルに興味が湧く

2020(令和2)年、リニア中央新幹線の建設を巡ってJR東海静岡県が揉めたのは、みなさんご存知でしょう。焦点は、「トンネル工事による水枯れの可能性」でしたね。

以前書いた記事で、読者さんからリニアのトンネル問題についてコメントをいただいたのですが、レベルが高くてちょっとわからなかった(^^;) そこでふと気付きました。

これまで鉄道マンとして散々トンネルを利用してきたくせに、トンネルについてロクな知識がない……。うーむ、これは恥ずかしいぞ。そこで、トンネルに関する入門書を買って読んでみました。

トンネル工法の“なぜ"を科学する

トンネル工法の“なぜ"を科学する

 

おーなるほど。トンネルってのは、こうやって作るのか。現代のトンネル技術はすごいんだなあ。

こうして本を読んでいるうちに、

無性にトンネルを作りたくなりました
よーし、公園の砂場にレッツゴーだ!
(^^)

もちろん、公園の砂場で大人が一人でトンネルを掘っていたら、不審者として通報されるので(笑) 娘と一緒に行きました。

今回砂場で作りたい「開削トンネル」とは?

さて、「砂場でトンネル」というと、大半の人は↓の図を思い浮かべるのではないでしょうか。

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一般的にトンネルといえばこういうイメージ

これは「山岳トンネル」というやつです。リニアのために中央アルプスをぶち抜いて作るのも、この山岳トンネルです。

しかし今回、私が砂場で作りたいのは開削トンネルと呼ばれるもの。これは、平地に地下鉄を通すときなどに使われます。「開削トンネル? なにそれ?」という人のために、作り方を説明しましょう。

① まず、地面に溝を掘る

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地表から掘り下げていく

② 溝の中にトンネル設備を作る

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トンネル設備を設置

③ 埋め戻せば地中にトンネルができる

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上から土をかぶせる

なんとビックリ!
「穴を掘る」のではなく「埋めて」作るのが開削トンネルなのです。

「トンネル = 穴を掘る」という固定観念に囚われていると、こういう発想は出てきません。何事でもそうですが、最初に思い付いた人は頭が柔軟ですよね。

砂場でのトンネル作りを写真で紹介!

さて、基礎知識の説明はここまで。いよいよ、KYS建設株式会社によるトンネル建設の模様をお送りいたします。

①まず、溝を掘ります。後で詳しく述べますが、ある程度の深さが必要です。

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溝を深く掘るのはけっこう大変だった

②次に、ペットボトルを溝の中に入れます。ある程度の長さが必要だったので、一本は料理酒のペットボトルを使いました。

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ペットボトルを2本横たえる

③ここから埋め戻し作業。ペットボトルの上から砂をかぶせ、砂蒸し風呂状態にします。

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ペットボトルの端は少しだけ顔を出しておく

④埋め戻したら上から踏み固め、中のペットボトルを引き抜きます。トンネルを崩さないよう、慎重に。

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左右からペットボトルをゆっくり抜けば、トンネル完成!

ペットボトルを抜いた空間がトンネルになりました!

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別の角度からもう一枚

⑤あとは同じ要領で、残りの溝も埋め戻すわけです。

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再びペットボトルの上から砂をかぶせて踏み固める

以上が、公園の砂場で開削トンネルを作る手順です。普通に「掘って」作るよりも楽なはず。みなさんも、ぜひ試してみてください。

砂場で開削トンネルを作るときのコツは?

ここからは、今回のトンネル作りで、私が注意した点(コツ)を説明しましょう。みなさんが実験するときの参考になれば幸いです。

  1. 最初の溝は深めに掘る
  2. 埋め戻しに使う砂には、湿り気を与える
  3. ペットボトルを抜く前に、しっかり踏み固める

溝は深めに ある程度の深さがないと天井が崩れる

コツその1。
最初の溝は深めに掘る。
理由は↓の図を見てもらえばわかります。

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崩れにくいトンネルはどっち?

図左のトンネルは、天井が薄いので崩れやすい。
図右のトンネルは、天井が厚いので崩れにくい。

コンクリートなどでトンネル壁面を固められない砂場のトンネルでは、天井強度を確保するために必要な工夫ですね。

砂には適度な湿り気を与える 「最適含水比」という概念

コツその2。
埋め戻しに使う砂には、湿り気を与える。

砂場の砂って、掘り出した直後は湿っていますが、そのうち乾いて白っぽくなりますよね。埋め戻す前に、乾いた砂は湿り気を与えた方がいいです。私は霧吹きを使いました。

なぜ湿り気が必要か?

これは経験上理解できると思いますが、乾いた砂で山を作ろうとしても、すぐに崩れてしまいますよね。しかし、適度な湿り気を与えてやると崩れにくくなる。砂は、水を含ませると強度が増すのです。

理論的に解説すると、乾いた砂は互いの摩擦力だけで形を保っていますが、水を含ませると、水の表面張力による粘着力が発生し、形を保ちやすくなります。ただし、水を含ませすぎると、ドロドロになって逆に粘着力が落ちますが。

砂がもっとも強度を発揮する含水率を最適含水比といいます。

上からしっかり踏み固めて丈夫な天井を作る

コツその3。
ペットボトルを抜く前に、しっかり踏み固める。

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エイエイッ ガシッガシッ 靴の跡が付くくらい踏み固めよう

極端な話ですが、単に上から砂をかぶせただけだと、天井が崩落しますよね。そうならないよう、しっかり踏み固めて、丈夫な天井を作りましょう。

ただし、あまり踏み固めすぎると、地中に埋めたペットボトルが抜きにくくなります。

さらに今回、私はお茶と料理酒のペットボトルを使いましたが、正直これは失敗。というのも、表面がデコボコしているので、砂から抜くときに引っ掛かりやすかったです。炭酸水などの、表面がツルツルした(=凹凸がない)ペットボトルを使うのがベターでしょう。

トンネルの惨めな末路……

こうして開削トンネル作りにせっせと励んでいたのですが、娘が「ブランコやシーソーで遊びたい」と言い出したため、いったん工事は中断。

この日は平日。
夕方近くなったので、近所の小学生たちがワラワラと公園にやって来ました。最近の子どもは外で遊ばないイメージがありますが、そんなことはないですね。

そして、鬼ごっこが始まる。公園内を縦横無尽に走り回る小学生たち。

そして……一人が砂場のトンネルを見つける。

「あートンネル!」
「どれー?」

おい、崩したりするんじゃねぇだろうな……とハラハラしながら見ていたら、案の定、トンネルの上に乗る! さらに足でガシガシ踏む! おいやめろ!

ズボッ

あああああああああああああああああ
このクソガキお坊ちゃまどもがあああ

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