ネット用語の「草」をご存じでしょうか?
これは「めっちゃ笑える・超ウケる」という意味です。なぜ、それを「草」と呼ぶのか?
元々の形は(笑)
→ 笑 = waraiの頭文字を取って「w」と表現
→ めっちゃ笑えるときはwをたくさん使って「wwwww」と表現
→ wwwwwは草が生い茂っているように見えることから、「草」と呼ぶ
こういう理由です。「草」はネット用語ですが、これと似たような要領で、いろいろな業界(職場)に、いわゆる業界用語が存在するのではないでしょうか。
もちろん、鉄道業界にもあります。今回の記事では、鉄道の現場で使われる変な(?)用語を、少しだけ紹介しましょう。以下の4つです。
- ケツ追い
- 当たり承知
- 塩漬け
- 山切り
【用語1】ケツ追い 先行列車のすぐ後ろを後続列車が走る
まず解説するのは「ケツ追い」という用語。
列車に乗っていたら、スピードが落ちてダラダラ運転になった。あるいは駅間で停まってしまった。そこで「前の列車に続いて運転しております」と放送された──そんな経験、ありませんか?
このシチュエーション、ようは列車が詰まって渋滞が起きています。
後続列車からすれば、先行列車の後部──ケツ(尻)を追いかけるように運転しているわけです。こうした状況を「ケツ追い」と呼びます。
なお、ケツ追いと似たニュアンスで「続行」という言葉もあります。たとえば、「A列車の続行でB列車を出せ」と言ったら、A列車から間隔を空けずにB列車を出発させることを意味します。
【用語2】当たり承知 遅延が起きるのを承知で走らせる
次の用語は「当たり承知」。
ダイヤ設定においては、列車がスムーズに走れるよう、他の列車との間に「適正な間隔」を設けます。
いま、ホームからA列車が発車しました。
A列車が発車した30秒後に、B列車をホームに到着させることは、まあ無理ですよね。同一ホームにおいて、「列車の発車」から「次列車の到着」までには、2分なり3分なりの間隔をあける必要があります。
先ほどの「ケツ追い」も同様です。先行列車と後続列車の運転時刻が、極端に近かったら……先行列車が邪魔で、後続列車はダラダラ運転を強いられます。ようは、スムーズに走れない。
列車同士が干渉せず、スムーズに走れるようにするためには、「適度な時間を挟む」ことが必要です。
というわけで、ダイヤを作るとき等は、原則として、列車相互間に一定以上の時間的間隔を挿入します。
しかし、状況によっては、時間的間隔を入れられないケースもあります。
たとえば、列車本数が多いところで、どうしても臨時列車や、遅れて入ってきた列車を走らせたいとします。このときは、わずかな隙間に列車を捻じ込むことになるため、時間的間隔が確保できません。
すると、他の列車が邪魔になって、スムーズに走れない(=遅れる)列車が出てしまいます。これを「当たる」と表現しますが、当たることを承知で列車を走らせることを「当たり承知」と呼びます。
「当たり覚悟」「遅れ覚悟」と表現した方が、イメージしやすいかも。
列車同士が本当に当たるわけじゃないですよ。それは衝突事故なので(笑)
ちなみに、当たり承知という用語、私はゲームでも使います。
たとえば、マリオ・ロックマン・星のカービィをやったことありますか? 敵に衝突したり、被弾したりすると──ようはダメージを受けると、点滅状態になって一定時間は無敵になりますよね。「喰らい無敵」などと表現されます。
これを利用して、わざとダメージを喰らい、無敵時間を利用して難所を突破したり、敵に攻撃しまくったりする方法があります。速さを競うタイムアタックでは必須の考え方です。私は、これを当たり承知と呼んでいます。
この場合は、列車での当たり承知と異なり、本当に敵に衝突しますね。
【用語3】塩漬け 長時間停めたままにしておく
3つ目の用語は「塩漬け」。
ダイヤが乱れたとき、それを正常に戻すための運転整理という作業があります。その際は、「どの列車を先に捌くか?」の優先順位があります。
簡単な例を挙げると、普通列車よりも特急列車を優先して対処する、という具合です。
したがって、優先順位が低い列車は、運転整理が後回しにされることがあります。早い話、放置です。場合によっては、駅に停まった状態で放置され、長時間動かないことがあります。
これを「塩漬け」と呼びます。投資の世界でも、売るに売れなくなった資産を長期間保有している(=動かしていない)ことを塩漬けと呼ぶようですが、それと同じです。
放置と表現すると、仕事をしてないみたいで、ちょっと印象悪いですね(^^:) その先の運転をどうするか決定できず、手配も決められないため、やむをえず駅に停めたままにしておく、と書いた方が正確かもしれません。
【用語4】山切り 途中の駅で折り返させる
さあ、最後の用語です。
ダイヤ乱れを正常に戻すために行う、運転整理という作業。遅れを収束させるためのワザがいろいろあるのですが、オーソドックスな方法を一つ紹介します。「山切り」と呼ばれるものです。
A駅まで行って折り返してくる列車があるとします。
この列車が大幅に遅延した場合、遅れを取り戻すためにはどうすればいいでしょうか?
解答の一例は「A駅まで行かず、手前のB駅で折り返させる」。
すると、A駅~B駅間を行き来する時間が浮くので、遅れを取り戻せます。これが「山切り」です。
概念は理解できると思いますが、これをなぜ「山切り」と呼ぶのか?
まず、「切る」とは、列車を運休させることです。切り捨てるという解釈でOK。
そして「山」ですが……これは、鉄道マンが業務で使用する列車運行図表というものに関係しています。
先ほど、「A駅まで行って折り返してくる列車」を例で挙げましたが、これを列車運行図表上で表現すると、↓のようになります。
山みたいになってますよね。そして、これをA駅まで行かせず、途中のB駅で折り返させた図が↓こちら。
山の上部を切った形になるのが、おわかりでしょうか? こういう理由で、途中駅で折り返させることを「山切り」と呼びます。
これでみなさんも「通」になれる?!
- ケツ追い → 先行列車のすぐ後ろを追いかけていくこと
- 当たり承知 → スムーズに走れない列車が発生することを承知で、列車を捻じ込むこと
- 塩漬け → 長時間動かないままになること
- 山切り → 遅れを回復させるために、途中駅で折り返すこと
以上、4つの用語を解説しました。この記事を読み終えたみなさんは、「鉄道通」のレベルが一段階アップしたことを保証します。